(日経ビジネス2018年3月5日号より転載)

(写真=加藤 康)

 防衛装備庁が発足したのに伴い2015年10月、初代長官に就任しました。同庁は、安全保障環境を踏まえた技術的優位の確保、防衛装備品のハイテク化を念頭に置いた調達改革を実現すべく、防衛省の外局として新設されたもの。内局の装備関係の部署、技術研究本部、装備施設本部、陸海空の自衛隊の装備取得部門などを統合した、1800人からなる巨大組織です。

 「事務官、技術者、自衛隊の制服組からなる“混成部門”なので、調整が大変では」と心配されましたが、運営に手こずることはありませんでした。

 装備庁はできたばかり。「装備政策部」など各部の部長は皆、初代部長です。「初代としてがんばってください」と気付きを与えると、「僕の前に道はない僕の後ろに道は出来る」よろしく、自律的に戦略を作ってくれた。時々、相談に乗る程度で歯車は回りました。

 人は、あれこれ指図しなくても、意気に感じれば自然と動くものです。嫌々やっている人のお尻をたたいても、思うようには働いてくれません。大事なのは、一人ひとりに自分の仕事の意義を理解してもらい、自発的に発奮してもらえる環境を作ること。

 指図されるより、やりがいを感じる方が人は動く。私自身の経験からそう思うようになりました。

 防衛庁(当時。以下、防衛省に統一)を六本木から市ケ谷に移転した際、新建屋の通信網を整備する仕事を担当しました。1990年前後は、電話とファクスが主体のアナログ通信網からデジタル通信網に社会全体が変わるIT(情報技術)革命前夜でした。