(日経ビジネス2018年2月5日号より転載)

(写真=大槻 純一)

 小学館の学習雑誌「小学一年生」のテレビコマーシャル「ピッカピカの一年生」。実はこれ、日本で最初にビデオカメラを使ったCMです。1978年の当時はフィルムで撮るのが当たり前の時代で、現像まで仕上がり具合は分からなかった。そこに、撮ってその場ですぐ見られるビデオカメラが登場しました。画質はフィルムに大きく劣ったので「あんなものでまともなCMは作れない」と、先輩クリエーターは敬遠していた。僕は「誰も使ったことがない、ということは、自分が先端に立てるということだ」と、胸躍らせていたんですよ。

 ビデオの得意技は即時性と生々しさにある。そこで「このCMは15秒間の生中継」と考え、登場してくれる「新一年生」たちの生の声と動きをそのまま表現しました。「桜井のおばちゃんに、ランドセル、買うてもうてん!」なんてセリフ、どんな脚本家も書けませんよね。予定調和ゼロの面白さで大ヒットしました。

 その後、「セブン・イレブン・いい気分」や、詩人ランボーをテーマにしたCMを作ったりしていましたが、98年だったかな、ある日突然「デジタル分野をやれ」と言われたんです。まだITはバナー広告中心で、収益もない時代。エレベーター横の小部屋に、広告のことを全然知らない理系の人たちと集められて、デジタルの部署を旗揚げしました。同時に、それまであまり経験のない同情というものも味わいました。「杉山、左遷か?」(笑)と。

 でも、強がり抜きで、自分ではさっと前向きに切り替えできたんです。新しいことをやれる喜びの方が大きかった。MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボのニコラス・ネグロポンテやシーモア・パパートといったデジタル界のスーパースターたちと縁ができて、それはそれは愉しかったし、日本のデジタル広告の礎を築けたと自負しています。