(日経ビジネス2018年2月23日号より転載)

(写真=的野 弘路)

 よく、「あいつは運がいい」と言います。あたかも、強運を持ちあわせているかのように。でも、よく見ると、幸運って誰かが運んでくれているんですね。だから、「運がいい」と言われる人は、みな、出会いをすごく大切にしています。逆に、「オレは運が悪い」という人は、どこか人とのつながりを大切にしていないように思います。

 先日、ある大企業のトップと話をしていると、「カネボウ(クラシエホールディングスの前身)と言えば、彼だよね」と元幹部の名前が出てきました。酒豪で宴会芸もうまいので、一度会えば忘れられない人です。実は、私にとっても「師匠」と言える存在でした。まったくの偶然でしたが、「つながり」を大切にしてきた彼の姿勢が起こした必然にも思えます。

 その先輩に出会ったのは入社直後のことでした。化粧品部門に配属され、西宮(兵庫県)にある寮に入ると、7年上の「主」のような人がいる。自分の部屋だけでなく、もう2室を物置に使っていて、その1室は「図書館」と呼ばれ、哲学書からマーケティングの本、小説まであらゆる書籍が積み上がっていました。

 「おまえ、学生時代は、どうせスポーツぐらいしかやってなかったんだろう。これからは1日5分でもいいから、毎日、本を読め」

 そういう本人は、どんなに酔って帰っても、1日3時間の読書を続けているという。嘘だと思って、深夜にトイレに起きるたびに、「図書館」のドアをそっと開けてみましたが、いつも机に向かっている。だから、こちらも読まざるを得ませんでした。おかげで、あらゆるジャンルの本を読むことが習慣になっています。

 それが、どれだけ「人付き合い」を広く深くしてくれたか。知識や教養ということだけではありません。書店の中を歩きながら、面白そうな本を探します。すると、思いがけない「出会い」がある。それは、人付き合いと根底で通じます。米国の有名な医学者いわく、「読書は仕事に直結するものは2割でいい。8割は関係ない本を読むことが有効である」と言ったそうです。一見、関係のない内容に、思いがけない気付きがあり、仕事にも生きてきます。