失敗を恐れず、挑戦を

 前例のない商品を発売する時、不安はつきもの。ですが、そこで立ち止まっているばかりでは、それこそ時代の変化に負けてしまいます。そもそも明治の頃、日本で初めてソースをつくって米国で販売したり、その後も「有機大豆」を原料としたしょうゆづくりにいち早く取り組んだり、他に先駆けて新たなことを試み、市場の開拓に挑戦することが、代々続く伝統と言えるかもしれません。

 もちろん、チャレンジにはリスクが伴います。ヤマサ醤油で一番多く“失敗”をしているのは私です。アイデアが浮かんだら試してみる。失敗したら改良してみる。それでもダメならしばらく寝かせて、時機を見てまた試して……。商品化に至らない失敗もあれば、商品化しての失敗もたくさんあります。“失敗作”の商品ラベルは手元に取ってあります。失敗からこそ学べることがあり、それを忘れないためです。

 それに、もしあなたがとても面白いアイデアを思いついたとして、失敗を嫌う上司に提案をする気になりますか? 私はなりません(笑)。挑戦と失敗の意義を知り、それを日々楽しんでいる人間のところにこそ、人材もアイデアも集まるのではないでしょうか。

 そしてもう一つ気をつけたいのは、アイデアに酔わないことです。自分が考えつくアイデアは、きっとほかの誰かも思いついているでしょう。でも、そうした多くのアイデアは、アイデアのまま消えてしまう……。重要なのは、優れたアイデアを、安全でおいしい商品に仕上げる力です。メーカーとしてそうした土台の部分がしっかりしていてこそ、様々なチャレンジができる。ユニークな商品は一日にして成らず。良い環境を整え、良い素材をしっかり熟成することが肝要です。(談)