久しぶりに米国の国内線に搭乗して、米航空業界の回復基調を実感しました。サンフランシスコ空港に着いて驚いたのが人出の多さ。さすがにコロナ前ほどではありませんが、近い水準に戻ったのではないかと思えるほどでした。
 さらに、機内でも驚いたことが。ワクチン接種が進む前は、マスク着用は当然、3人席の真ん中を空けるなどの人数制限を設けていました。ところが、搭乗してみると真ん中の座席も埋まる満員状態。既に成人の半数以上がワクチンの完全接種を終えた米国は新規感染者も減っており、回復への道を着実に歩んでいるように感じます。
 米運輸保安局(TSA)のデータを見ると、米国内の空港における保安検査場の通過人数は、春休み中の4月上旬の多い日で150万人強。19年の同時期の6割ほどの水準でした。その後も空港利用者の回復は続き、5月の3連休(土日月)の最終日である5月31日の「メモリアルデー」では、19年の75%ほどに当たる190万人程度まで戻っています。
 そんな回復基調を象徴するようなニュースが飛び込んできました。6月3日、米ユナイテッド航空が超音速旅客機15機を購入する契約を締結したと明らかにしたのです。契約相手は超音速機を開発中の米新興企業、ブーム・スーパーソニック。15機がユナイテッド航空の安全基準を満たせば、さらに35機、合計50機を購入する契約です。
 ブーム・スーパーソニックは現在、小型試験機を完成させた段階。65~88人乗りを想定した商用機の開発にも着手しています。29年にも乗客を乗せたフライトを開始する計画です。
 国際線向けに超音速旅客機を契約したユナイテッドは、国内線に向けた新しい機体の調達にも動いています。「eVTOL」と呼ばれる電動の垂直離着陸機です。21年2月に米新興企業、アーチャー・アビエーションの機体を10億ドル(約1090億円)分注文しました。ローカル路線を手掛ける米メサ航空と共同で最大200機のeVTOL機を導入し、米国内の路線で今後5年以内に運航させたいとしています。アメリカン航空も、英バーティカル・エアロスペースから最大350機のeVTOL機の予約注文で合意したと6月10日に明らかにしました。米航空大手が相次いで新型機の調達に動いたことからも、回復基調がうかがえます。
 もっとも両社とも、まだ厳しい経営環境から抜け出したとはいえません。例えばユナイテッド航空は、21年1~3月期の業績は最悪期こそ脱したものの13億5700万ドル(約1480億円)の赤字。株価も少し回復して50ドル台で推移していますが、コロナ禍前の90ドル前後には遠く及びません。旅客需要の回復を背景にした「反転攻勢」のような新型機の購入契約は、苦しい現状から目をそらさせる施策のようにも見えます。
 航空会社の本格的な業績回復は、世界でコロナの感染拡大が収まり、国際線需要が回復するかどうかがカギを握るでしょう。米国内もワクチンの接種拡大のスピードが落ちてきており、夏季休暇や年末年始休暇の時期に再び感染が拡大すれば大きな打撃を受けることになります。ユナイテッド航空をはじめとする米航空業界にとって予断を許さない状況はしばらく続きそうです。

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