こんにちは、シリコンバレー支局の市嶋です。
 妖怪エクスプレス(Yo-Kai Express)というシリコンバレーの企業をご存じでしょうか。
 創業者のアンディ・リン最高経営責任者(CEO)が日本通で、妖怪のようにどこにでも現れて、ラーメンが食べられるようにと名付けたスタートアップです。
 1年半前に聞いた時は、ラーメンの自動販売機を自社調理の冷凍食材とともに、企業や空港内などで提供していました。その時点では「妖怪のようにどこにでも」ではないのでは、と正直思っていました。
 しかし、先週日本で同社が日本オフィスの開設を公表し、明らかにしたロードマップを見ると、まさに神出鬼没でした。今夏以降に展開していく考えだそうです。
 もっとも注目すべきは自動運転型のラーメン自動販売機です。自走式で、需要のあるところに移動して販売したり、構内を走り回って顧客に止めてもらったりすることができます。規制の問題さえクリアできれば、顧客宅にデリバリーする際に到着時間を考慮して、調理を始めることができます。
 実際、デリバリーロボットが走り回る米カリフォルニア大学バークレー校の構内で実験を始める予定だといいます。今夏にもプロトタイプが完成する予定で、日本でも規制のクリアを条件に実験する考えです。
 このほか、家庭やホテルの部屋に備え付けることができる卓上型、コンビニエンスストアで「100円コーヒー」のようにセルフで購入できる据え置き型を日本で展開していく考えです。
 Yo-Kaiのビジネスモデルは米国で強い企業が採用している垂直統合です。自社の設備でラーメンなどの食材を調理して冷凍し、自動販売機に配送してセットしています。ハードとソフトの両方を自社で手がける形です。
 さらにコンテンツの拡充も進めています。日本の有名ラーメン店などと組んで、新たなメニューを開発しているのです。リンCEOは「ラーメン店にとっても、我々の自販機を通じて、日本だけでなく米国や世界に販売できる。ラーメン以外にもメニューの種類を増やしていき、販売プラットフォームとしてアマゾン・ドット・コムを目指したい」と言います。
 自販機を小型のレストランと捉えることで、投資回収効率を高めることができます。「レストランであれば投資回収に18カ月以上かかるが、我々の自販機であれば8カ月以内だ」(リンCEO)
 Yo-Kaiはこれらの製品をコロナ禍の最中に開発しました。同社は現在、日本の大手食品メーカーなどと協業の交渉を進めていると言います。ラーメンと自販機文化の進んだ日本が、なぜYo-Kaiのようなビジネスを先んじて生み出せなかったのか。Yo-Kaiが成功するかどうかは現時点では未知数ですが、学ぶべき点が多そうです。
 なお、来週は本ニューズレターはゴールデンウイークのため、お休みとなります。東京や大阪などでは緊急事態宣言が続きますが、お気をつけてお過ごしください。
(シリコンバレー支局長 市嶋洋平)