先週、半導体大手の米エヌビディアが年次イベント「GTC」をオンラインで開催しました。今回の目玉は、サーバー向けのCPU(中央演算処理装置)への参入の発表。株式市場もエヌビディアの戦略を評価し、16日のエヌビディア株の終値は前週に比べて約10%値上がりしました。そのエヌビディアに対する報道陣の関心事の1つは、英アームの買収の進捗でした。
 アームはCPUの中核部分(「コア」と呼ばれます)を設計する企業。コアにアームがつくった仕様や設計図を使わない半導体はほとんどありません。だからこそ、エヌビディアが最大400億ドル(約4兆3000億円)でソフトバンクグループからアームを買収するという2020年9月の発表は衝撃的でした。アームの顧客であるエヌビディアが、他の半導体メーカーと公平な立場であり続けるのかという疑問があったからです。
 実際、アームのコアを使う企業からの反発もあるようです。21年2月には、グーグルやマイクロソフト、クアルコムなどの米国の大手企業がエヌビディアによるアーム買収について各国の規制当局に懸念を示したと米メディアが報じました。
 事態はそれだけでは収まりません。ハイテク産業における米中の摩擦が激しくなる中、中国の規制当局がアーム買収を承認するかどうかがさらに不透明になってきています。3月には半導体装置世界首位の米アプライドマテリアルズが、中国の当局の承認を得られずに旧日立製作所系のKOKUSAI ELECTRIC(東京・千代田)の買収を断念したばかりです。かつてクアルコムがオランダNXPセミコンダクターズの買収を断念したのも、中国の承認を得られなかったことが理由でした。
 GTCの開催に合わせて、報道機関からの質問に答える場を設けたジェンスン・ファンCEO(最高経営責任者)。やはり飛び出したアーム買収の進捗に関する質問に対しては「米国と欧州、アジアの規制当局に対して我々のビジョンを説明しており、(アーム買収がテクノロジー業界の)競争やイノベーションの促進につながるとして支持されている」と、従来通りの答えを繰り返しました。買収完了の時期も、発表したときと同じ「22年」と据え置きました。
 ただし、アプライドマテリアルズが断念した買収案件との違いを明確にすることもありませんでした。現時点では買収できると信じるしかないというのが正直なところでしょう。19日には英国政府が安全保障上の懸念を理由にアーム買収計画を調査すると発表しました。エヌビディアはもくろみ通りにアームを買収できるのか。残り約1年、目が離せません。
(シリコンバレー支局 根津 禎)