こんにちは。シリコンバレー支局の市嶋です。
 この1週間は米ペイパルが暗号資産のカストディ(資本管理)サービスを提供するイスラエルのカーブ(Curv)を買収するという話題や、ビットコインが1カ月で1万ドル上昇する話題など、暗号資産やブロックチェーンに関するニュースが相次ぎました。
 こうした中、ブロックチェーンのテクノロジーを利用したデジタル資産の管理手法「ノン・ファンジブル・トークン(NFT)」がシリコンバレーや米国では話題になっています。ファンジブル(fungible)は代替可能という意味で、NFTは代替できないものを意味しています。つまりデジタルデータが唯一のものであることを証明でき、基本的に他人への譲渡も可能です。
 NFTは無限にコピーすることが可能なデジタルの著作物を、価値の高い有形物のように扱うことができます。コロナ禍で一気に押し寄せたデジタル化とあいまって注目されています。
 NFTはデジタルアートや音楽などで利用され始めています。限定品として発行する、スポーツ選手やゲームのキャラクターのデジタルカードでも活用できます。ファンにとっては自分だけの特別なデータということで、所有欲をくすぐられることでしょう。
 最近話題になっているのが、米ツイッターの共同創業者でCEO(最高経営責任者)のジャック・ドーシー氏です。ドーシー氏はサービスの立ち上げ準備ができたとして2006年3月にツイートした「just setting up my twttr」の所有権をNFTとして販売しています。2020年12月15日に1ドルで始まったオークションは、記事執筆時点で250万ドル(約2億7250万円)にまで高騰しています。
 ドーシー氏がオークションに利用しているのは、「Valuables」と呼ばれる、ツイートを売り買いするNFTのプラットフォームです(冒頭の写真)。ブロックチェーン技術をベースにしており、ドーシー氏のツイートの購入者はValuablesのサービスを利用して自分が唯一無二の所有者であることを証明できます。ちなみにValuablesでは様々な個人が自分のツイートを数ドルから数十ドルで販売しています。写真があるツイートも出品されています。
 今後、NFTが普及するとこうした売買サイトが乱立し、利用者側に不利益が生じることもありそうです。それこそ偽物を高値でつかまされるということも出てくるのではないでしょうか。
 現在、NFTで最も成功しているといわれているのが、米国のロックバンド「Kings of Leon」です。米ビルボード誌などによると、限定版のデジタルアルバムとして200万ドル(約2億1800万円)以上を売り上げているそうです。原稿執筆時に確認したところ、暗号資産の一種であるイーサリアム通貨で0.0351ETHで販売しています。1ETHが約1800ドルなので、およそ63ドルです。
 冒頭に紹介した通り、暗号資産は値動きが激しいデジタル通貨です。このため現地通貨ベースの価値が上下することを考慮する必要があります。このほか所有権だけでなく、著作権を譲渡できるのかといったことや各国の法制度とのすり合わせなど、様々な課題がありそうです。
 こうした課題はあるものの、デジタル化が一気に進んだ今、NFTが登場し、テクノロジストたちから注目されるのは必然と言えるでしょう。
(シリコンバレー支局長 市嶋洋平)