ファーストリテイリングが展開するユニクロの男性用シャツの米国への輸出が1月、米税関によって差し止められていたことが分かりました。新疆ウイグル自治区産の綿製品に対する禁輸命令に違反した可能性がある、というのがその理由です。
 米税関が公表した5月10日付の文書によると「新疆生産建設兵団」が関わった綿を使った可能性があることが理由とされています。ファストリは昨年8月、ユニクロ製品の生産委託先にも素材工場や紡績工場にも新疆ウイグル自治区に立地するものはないと発表しています。今回、米税関に対して異議を申し立てましたが却下されました。中国外務省の趙立堅報道官は「米国のいじめ」と述べ、「関連企業は団結して、米国のこうした不合理な行為に反対すべきだ」とファストリへの援護射撃を行っています。
 問題となっている新疆生産建設兵団とは、新疆ウイグル自治区を拠点とする準軍事組織です。1954年に設立され、300万人近い団員を抱えています。新疆ウイグル自治区で実施されている厳格な思想統制に大きな役割を果たしているだけでなく、綿花栽培やトマト製品の輸出など幅広い事業を営んでおり、同地区の経済に深く根を張っています。明治時代に北海道の警備と開拓に当たった屯田兵の現代版だと考えると分かりやすいかもしれません。もっとも、屯田兵はそもそも漢から明にかけて行われていた制度とされていますので、中国に言わせれば「本家本元はこちらだ」ということでしょう。
 「1着の衣服は様々な素材やパーツで成り立っている。新疆綿は繊維の長い超長綿の中でも存在感が大きく、中国で綿花を使用した製品を作る上で完全に排除することは事実上不可能だ」と、繊維商社の担当者は言います。中国は世界トップの綿花生産国で世界シェアは2割超。そして、中国で生産される綿花の8割以上は新疆産なのです。また、製糸にあたっては複数の産地の原料を調達することが珍しくなく、原料に新疆綿が入っていないことを証明することは極めて困難です。
 新疆ウイグル自治区には大規模な「職業訓練センター」が存在します。中国政府は人権侵害を否定していますが、強制的に収容された、強制的に不妊手術を受けさせられたなどの証言が多くあります。同地区では自由な取材活動ができず、実態が分からない状態が続いています。
 企業は取引先が強制労働などに関わっていないかなど、サプライチェーンを丹念にチェックすることしかできることはありません。ただし、一般的な国と比べても監査は難しいことは明らかです。アパレル業界の中でもサプライチェーン管理のレベルが高いと見られるファストリが米政府を納得させられなかった事実は、この問題の解決の難しさを物語っています。
(上海支局長 広岡延隆)

(写真:AFP/アフロ)