5月15日、中国国営の新華社通信は無人探査機「天問1号」が火星への着陸に成功し「中国の宇宙探査の道程の重要な一歩だ」と伝え、国内メディアはお祭り騒ぎとなりました。探査機の火星着陸は旧ソ連、米国に次ぐ3カ国目の快挙です。
 「宇宙強国」。映画「スターウォーズ」を思い起こさせるような物々しいフレーズですが、習近平指導部が現実に掲げている目標です。中国はすでに「天問4号」まで計画しており、火星の有人探査や木星のサンプリング調査を視野に入れています。
 中国が立案する「5カ年計画」などは計画経済の名残と言われます。それを達成するためのプレッシャーは強く、行政運営において様々な弊害が生まれていることも事実です。ただし、各種の計画が緻密に作り込まれていること、その遂行能力も着実に向上していることはしっかりと認識する必要があります。
  宇宙開発に用いられる科学技術は軍事と直結しています。1992年、中国は国際宇宙ステーション(ISS)への参加を拒否されたことをきっかけに、自前での技術開発を続けてきました。
 中国政府は宇宙開発においても技術をオープンにしていくと繰り返しますが、実効性には疑問符がつきます。いずれにせよ、米国を主軸とした国際協調の枠組みでは当たり前のものである、リアルタイムでの情報共有は期待できないことは明らかです。
 宇宙開発において、約30年前に起きた科学技術の「デカップリング(分断)」の影響が顕在化しています。経済分野における分断はどのような影響をもたらすことになるのでしょうか。
(上海支局長 広岡延隆)

(写真:AP/アフロ)