「すべての道はBATに通ず」。スタートアップから大手まで、中国の様々な企業の動きを調べていると思わずそんなことを言いたくなってきます。必ずと言っていいほど「BAT」、すなわち百度(バイドゥ)、アリババ集団、騰訊控股(テンセント)と資本や業務で関係を持っているからです。
 今や中国の社会・経済の様々な場所に根を張っている中国IT大手の貪欲さには舌を巻きますが、中でも存在感が大きいのがアリババとテンセント。デジタルマネー、ネットショッピング、SNSなど様々な場面で両社は直接のライバルです。多くの中国企業が「アリババ系」「テンセント系」に色分けされてしのぎを削る様子は、まるで陣取り合戦です。
 今月に入って、そんな動きがいよいよ日本にも本格的に波及してきたのかと思わされる出来事が相次ぎました。
 楽天は3月12日、第三者割当増資で2423億円を調達すると発表しました。引受先は日本郵政やテンセントなど。テンセントとは越境ECや動画配信コンテンツ、ゲームでの連携を検討するといいます。テンセントは昨年、プラチナゲームズ(大阪市)とマーベラスという日本のゲーム2社にも出資しました。
 メルカリは同1日、アリババと組んで越境販売を始めると発表しています。アリババ傘下の通販サイト「淘宝(タオバオ)」、フリマアプリ「閑魚(シェンユー)」と連携し、日本のフリマアプリ「メルカリ」に出品された商品を中国の利用者が購入できるようにするという内容です。アリババは創業期にソフトバンクから出資を受けており、それ以来両社は深い関係を築いてきました。その流れでヤフーもアリババと組んで日本企業に越境ECを支援しています。新たにメルカリも「アリババ陣営」に加わった形です。
 テンセントとアリババは、うまくシナジーを出せれば14億人の消費者を擁する中国市場の玄関になる存在です。ただし、ここに来て中国政府が自国のIT大手に対する統制を強化しており、カントリーリスクが高まっているとの見方もあります。米中対立が激化する中で状況を見誤れば思わぬ形で足をすくわれかねません。中国独特のビジネスと政治の距離感を十分理解しておくことが、日本企業にも求められる機会が増えそうです。
(上海支局長 広岡延隆)

(写真:アフロ)