中国の華為技術(ファーウェイ)は2月25日、折り畳みが可能なディスプレーを搭載した新型スマートフォン「Mate X2」を発売しました。中国国営の新華社は同日、直販ストアで376万人以上、京東集団(JD.com)の通販サイトで93万人以上が予約し、合計すると470万人以上が購入する予定だと伝えています。1万7999元(約29万5000円)からという高価格を考えれば驚異的な出足です。両サイトで重複予約した人もいるでしょうが、単純計算ではこの1機種で1兆3800億円以上の売上高が見込まれることになります。
 昨年9月にファーウェイが米国から半導体の事実上の禁輸措置を科された後、中国では「愛国消費」が同社のスマホ販売を押し上げました。ファーウェイは自社設計した半導体を台湾積体電路製造(TSMC)に生産委託していましたが、このルートが封じられました。そのため禁輸措置発効直前に半導体を駆け込みで大量輸入しており、今回の新製品もその在庫を利用して生産したものです。「今買わなければもう手に入らないかもしれない」。米規制は、中国人にとってむしろファーウェイ製スマホの希少性を高めるマーケティング効果があったのかもしれません。
 ファーウェイが「Mate X2」を発表したのは2月22日。翌日からは上海でアジア最大のモバイル関連見本市「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)上海」が開幕するタイミングでのお披露目でした。MWC上海でファーウェイは例年通り大型ブースを設け、関連記者会見も次々に開催するなど、お膝元の中国における圧倒的な存在感を見せつけました。
 MWC上海のファーウェイブースに置かれた「Mate X2」の周りには人だかりができており、記者も手にとって操作する機会に恵まれました。短時間でしたが「これなら十分使いやすそうだ」というのが感想です。これまでの折り畳み型スマホは一部の愛好家向けの製品でしたが、その裾野が拡大する可能性が出てきたと感じました。
 2019年に発売した初代折り畳み型スマホ「Mate X」はディスプレーを外側に折る方式で、開く際には開閉スイッチを押す必要がありました。「Mate X2」は内側に折る方式に変更されています。この方式では折り畳むとディスプレーが見えなくなってしまうので、背面にもスマホサイズのディスプレーを新たに付けました。いわば「スマホ専用」「タブレット専用」の2つのディスプレーを備えたといえます。
 外折り式の場合、折り畳んだ状態では表も裏も画面がむき出しになるため落下時などに不安があります。内折り式の場合、折り畳んでしまえば通常のスマホと同じく表のみに画面がある状態になりますし、背面ケースも付けられます。また「Mate X」では折り畳んだ状態か否かを検知してソフト処理で画面表示サイズを切り替えるため、切り替える際にタイムラグがありました。「Mate X2」はそれぞれの画面が事前に用意してあるためか、切り替えがスムーズになったように感じました。
 折り畳みスマホという新ジャンルの製品における着実な進歩はファーウェイの実力を示すものといえそうです。ただし、日進月歩の半導体産業を考えれば、在庫だけでビジネスが継続できる期間は長くありません。実際、同社は自社製半導体を使わない下位機種ブランドについては昨年11月に事業を売却しています。
 ファーウェイの任正非最高経営責任者(CEO)は2月9日、ジョー・バイデン米大統領になったからといって禁輸措置がすぐに解除されることはないとの見方を示しつつ「米国製品を大量購入したい」と述べました。2つの大国の間で翻弄されるファーウェイの姿に、メディアは注目しがちです。ただし、ファーウェイが米中対立の焦点といえる存在になった背景には、「Mate X2」のような製品を生み出す現場の努力があるという面も理解する必要がありそうです。
(上海支局長 広岡延隆)