こんにちは。上海支局の広岡です。今回から毎週火曜日、中国の現地情報をお伝えして参ります。
 中国では春節(旧正月、今年は2月12日)に伴う連休(11〜17日)が終わったところ。春節といえば中国人が大移動する光景が風物詩として、毎年ニュース映像として流れていましたが今年はすっかり様子が変わってしまいました。新型コロナウイルスの再流行を抑えたいと考える政府が帰省や移動の自粛を呼びかけ、春節連休中に交通機関を利用する人の数は前年比約6割減となりました。
 中国は日本に比べて休日が少なく、大型連休は春節と10月1日の国慶節の2つだけ。家族を大切にする中国人にとって、春節は想像以上に大切なイベントです。昨年12月、寒波の影響などで浙江省や湖南省などで停電が起きた際は、農村から都市部に出稼ぎに来ている「農民工」と呼ばれる人たちの一部が地元に帰ってしまうという現象も起きました。
 春節の15日ほど前に帰省するのは珍しいことではないのですが、2カ月前とはあまりに早すぎます。浙江省の工場関係者に事情を聞くと、「工場が稼働しなければ、働いた日だけ給料をもらう契約が一般的な農民工はどのみち収入が断たれてしまう。春節連休が近づけば近づくほど交通料金が高くなるし、コロナがまた流行すれば本当に春節に帰省できなくなるから仕方ない」と諦め顔で答えてくれたのを覚えています。春節期間の交通利用者減少の裏側には、そんな意図せざる「ピークシフト」も影響したかもしれません。
 政府の自粛要請を無視して帰省しても、帰省先でコロナが流行すれば仕事に大きな影響が出ます。そのリスクを考え、単純に帰省を控えた人も多かったでしょう。都市封鎖で閉じ込められる可能性だけでなく、職場のある都市に戻れてもさらに2週間の隔離が求められることになります。広東省深圳市で働いている26歳の若者は、それでも故郷の大連市に戻りました。「何度もPCR検査を受けさせられましたよ」と閉口した様子でしたが、久しぶりの実家はどうだったかと聞くと、両親や親戚が集まってご飯を食べている時の写真をうれしそうに見せてくれました。
 中国はコロナの封じ込めに成功し、昨年は主要国で唯一経済成長を果たした国になりました。2020年に実質GDP(国内総生産)で2.3%成長。経済ニュースが伝える数字は無味乾燥なものですが、その背後には普通の中国に住む人たちの日々の営みや思いがあることを忘れずにお伝えしていきたいと思います。
(上海支局長 広岡延隆)

(写真:AFP/アフロ)