こんにちは、ニューヨーク支局の池松です。前回の当欄でゴールデンウイーク中は日本に一時帰国していたとお伝えしました。現在はニューヨークに戻っています。日本では家族との時間はもちろん、4月の異動でまだ会ったことのなかった上司や同僚と対面で話す機会を得て、とても充実した時間を過ごすことができました。皆さんはどんな休暇を過ごされたでしょうか。
 新型コロナウイルスに関する日本の水際対策への疑問については日経ビジネス電子版のコラム「ニューヨーク発直行便」で詳しく書きました。自主隔離期間を終え、街に繰り出してまず感じたのが、東京都や大阪府などに出されている「緊急事態宣言」と千葉県や神奈川県などが対象地域となっている「まん延防止等重点措置」の不思議さでした。
 街に出るととにかく違和感を抱くのが人々の密集具合です。米国に比べて人口密度の高い日本。致し方ないと言えばそれまでですが、歩道や駅の構内などを歩いていると、まだスペースに余裕があるのに、かまわずぶつかりそうになる距離(実際に肩がぶつかった人もいました)まで近寄ってくる人がたくさんいました。「なぜもっと端を歩かないの? なぜ近くに寄ってくるの?」と頭の中はクエスチョンマークだらけ。普通に歩くだけでぐったりしてしまいました。
 電車に乗るのは比較的にすいている時間帯を選びましたが、それでも席はいっぱい。立っている人もいるためソーシャル・ディスタンスを取るのは難しい状況でした。この点は米国でも感染拡大が収まるにつれ同じ状況になっていました。ただ、利用客が増えたため、郊外からマンハッタンを行き来する電車では、一時的に減らしていた運行数を元に戻す対応をしていました。
 日本で最も驚いたのは、レストランやカフェなどの飲食店やドラッグストア、食料品店の店内で中に入れる人数を全く制限していなかったことです。マスクを着用している以外は、ほぼ通常通りの密集具合で飲食や買い物をしなければなりませんでした。
 日本にいらっしゃる方は当たり前になっているかもしれませんが、ニューヨークではこれまで店内へ入れる人数が制限されていたので、違和感しかありませんでした。例えば、筆者が日本に行く前、ニューヨークの飲食店では収容人数の50%の入店が許可されていましたが、日本滞在中に75%まで緩和され、この記事を書いている5月18日の翌日から、ようやく100%の収容が認められることになりました。経済の完全再開に向けた大きな節目になります。全く店内で飲食できない期間も長かったので、やはり「なぜ? どうして?」と疑問がわいてしまいました。
 もう一つ、日本のコロナ対策で違和感があったことの一つが酒類の提供中止でした。あまりに不思議だったので友人や同僚にその理由を聞いたところ、全員が「お酒を飲むと声が大きくなり、つばが飛ぶから」との回答でした。
 確かにお酒を飲むと声の音量は大きくなる傾向にあると思いますが、つばについては普通に話しているだけでも遠くに飛びます。だからこそのソーシャル・ディスタンスとマスクの着用です。「3密を避けよう」と世界に先駆けて発信した日本を誇らしく感じていただけに、お酒の提供を禁止しても店内の収容人数を減らさない論理に疑念を抱きました。酒類の禁止は一部の飲食店にとっては致命的ですから、人数制限をしながら感染拡大を収束させる方向はあながち間違っていないように感じます。
 もちろん、日本に比べて感染者数も死者数も圧倒的に多かったニューヨーク。対策が厳しくなるのは当然のことです。ただワクチン接種者の数が急増した2021年3月下旬以降、ニューヨーク州の感染者数は急速に減り、ニューヨーク・タイムズの集計では3月28日の8852人から5月17日には1379人に減っています。
 コロナ対策では、国の方針がその国の経済の未来を大きく左右すると、経済再開間近のニューヨークで実感しています。日本政府には、どうかガラパゴス化することなく、海外の事例を参考にしてもらいたいものです。
(ニューヨーク支局長 池松由香)