こんにちは、ニューヨーク支局の池松です。本欄はいつもなら、平和的なニューヨークの気候の話題から入るところですが、これを執筆している13日の朝、筆者にとって衝撃的なニュースが舞い込んだため、今回は割愛させていただきます。
 衝撃的なニュースとは……米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の新型コロナウイルスワクチンを接種した人の中に、血栓が生じた事例がいくつか報告されたため、接種が全米で中断されたことです。筆者がまさにJ&Jのワクチンを接種した2日後のことでした。
 「エーッ、あんなに苦労して予約して、接種後の副作用も乗り越えて、今朝からようやく回復したのに、今さらそんなこと言わないで!」
 これがニュースを聞いた直後の正直な気持ちでした。
 体験談は改めて筆者のコラム「ニューヨーク発直行便」で取り上げたいと思っていますが、典型的な副作用が出たのは、接種当日(11日の日曜日)の午前11時過ぎから10時間ほど経過した午後9時過ぎのことでした。なんとも気分の悪い悪寒に襲われたかと思うと、数十分後に37度5分まで体温が上がり、気分の悪さから一転、宙に浮いているような感覚に陥りました。
 タイミング悪く、ちょうど特集の校了作業が佳境を迎えていました。ソファで1時間ほどゆっくりした後、むくっと起き上がって作業を進めました。悪寒の時は、背筋がぞわっと寒くて(その名の通りですね)仕事どころではなかったのですが、発熱した後の方が気分的には楽で、仕事に集中するにつれ副作用のことも忘れていきました。
 無事に作業を終え、数時間の仮眠を取った後、こちらの12日月曜日を迎えたのですが、その日もいつもの調子が出ません。なんとなく腰が痛いような、節々がゾクゾクするような……。頭痛もしていたような気もしますが、もともと頭痛持ちで慣れてしまっているせいか、そこはあまり気になりませんでした。ただ確実に、いつもと違う感覚でした。
 「あ、副作用が終わったな」と感じたのは、12日の夜になってからです。急に体が普段通りに軽くなったので、自分の体がワクチンの攻撃に打ち勝ったことを知りました。「よくやった!」と、自分の体を褒めてあげたい気分になり、湯船にお湯を入れてゆっくりとつかりました。そして遅めの時間に就寝した翌朝、冒頭のニュースを知ったのです。
 すがすがしかった朝は一変、冷や汗が出てきました。すぐに地元メディアの報道を読みあさり、理解が進むにつれ、心身共に落ち着きを取り戻しました。血栓は非常に「まれ」で、筆者自身が発症するのはまず考えられないだろうと思えたからです。
 確認されている血栓の「まれ」というのには、2つの意味があります。一つは、J&Jのワクチンを接種した人が発症した血栓が脳静脈洞血栓症(CVST)と呼ばれるもので、症例として極めてまれだということです。ちなみにJ&Jのワクチンと同じ技術を採用した英アストラゼネカのワクチンでも、同じCVSTの症例が確認されています。
 もう一つがJ&Jを接種した人全体の中で、CVSTを発症した人の割合が非常に小さいということです。米国では既に700万人以上が同社製ワクチンを接種していますが、血栓の症例が確認されたのは13日夜時点で6人です。確率としては100万人に1人よりも小さい数字になります。
 また血栓を発症したのはいずれも女性で、18~48歳までの比較的に若い人たちでした。筆者は女性で、この年齢枠にギリギリ入っているものの、(幸か不幸か)ど真ん中というわけではありません。
 13日夕に放映されたCBSテレビのニュース番組で米国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長は、妊娠の可能性のある年代の女性の発症が多いことから「関連性はあるだろう」とした上で、「非常に事例が少ないので心配しすぎるのは良くない」「ただ(ワクチンを打ってから抗体ができるまでの期間とされる)2週間が経過するまでは体調に注意を払うべきだ」と話していました。
 筆者は打ったばかりなので、ファウチ所長の言う2週間後の“安心フェーズ”に到達するまでにまだ12日間もあります。ありがたいことに、支局の仕事を手伝ってもらっているアシスタントさんから「血液をサラサラにする食品リスト」なるものが送られてきました。かわいらしい心遣いに心が癒やされました。
 この「まれな血栓」に効果があるかどうかは分かりませんが、夕方はそのリストに掲載されていた納豆とサバ缶を買いに日本食料品店に行ってきました。しばらくは日本食のパワーをもらいながら、健康的に過ごしたいと思います。原稿執筆中は、これまたリストに載っていたコーヒーを飲みながら。
 J&J製ワクチンを既に接種した女性の皆さん、「心配しすぎず健康的に」を合言葉に共に乗り越えましょう。
(ニューヨーク支局長 池松由香)