こんにちは。ニューヨーク支局の池松です。ここのところ、日本の情報をYouTubeで入手することが多くなってきました。無料でほぼ地球の裏側の情報がリアルタイムで見られるのですから、筆者が米国留学をしていた1990年代とは雲泥の差があります。
 この原稿を書いている米東部時間2021年2月23日、筆者のYouTubeのオススメ動画にトヨタ自動車が静岡県裾野市に建設する実証都市「ウーブン・シティ」に関する日本のニュースが流れてきました。「223」の富士山の日に、地鎮祭が執り行われたとのこと。
 20年1月、米ラスベガスで開催されたデジタル見本市「CES」の舞台で豊田章男社長が構想を発表したときは筆者も会場にいました。「あれからもう1年以上たつのか……コロナ騒ぎでなんだかあっという間だったな」などとしみじみ感じました。ちなみにこちらではほとんどウーブン・シティのニュースは報じられていません。
 ニュースを見ていて連想したのは、米アマゾン・ドット・コムがワシントン近郊のバージニア州に建設中の第2本社でした。すでに20年から建設は始まっていて、世界を驚かせたジェフ・ベゾスCEO(最高経営責任者)退任発表直後、地元メディアに改めて構想がお披露目されました。完成は25年とのことです。
 「The Helix(らせん)」と呼ばれる奇妙な形の本社ビル(冒頭のイメージ図)が中核となりますが、同じ区画にはアマゾンだけでなく他社のオフィスや商業施設もできるようです。レストランや小売店はもちろん、コンサートスペースやドッグパーク、デイケア施設までもが入り、人々がそこで働くだけでなく楽しく遊べる一大観光名所になると見込まれています。アマゾンだけで2万5000人の雇用を生むほか、地域社会に25億ドルの資金を今後の10年で投じるといいます。3億4000万ドルを費やして低価格で住める1300の住宅を建設するともいい、「本社」の域を超えて「街」になりそうです。
 自動運転車やドローンを使っての宅配や、AI(人工知能)の開発に積極的なベゾス氏のことですから、この場所で自動配達などさまざまな実験をするのだろうと筆者はみています。と考えると、かなりトヨタのウーブン・シティに似ています。
 ただ、異なるのはそのやり方です。
 工場跡地という私有地を使い、提携先企業は受け入れるもののあえて閉じた空間をつくって「何でもできる」状況を生み出そうとしているのがトヨタ。一方のアマゾンは、思い切り人々に開放することで先に「本物の街」をつくり、(筆者の予想が正しければ)実証実験はあえてリアルに人々が行き交う場所で実施する──。
 これもまた筆者の予想ですが、ワシントン近郊を選んだのは未来都市の実証実験を踏まえてのことでしょう。地域社会に経済効果をもたらすとあれば、ワシントンの政治家たちもアマゾンが望む法整備にゴーサインを出す可能性が高いからです。
 もちろん国によって既存の法整備に違いがあるので一概には比べられません。ただ、アマゾンの戦略には一記者としていつも本当に圧倒させられます。そしてトヨタには、制限された環境の中でも「日本流」でがんばっていただきたいと応援する気持ちを新たにしました。
(ニューヨーク支局長 池松由香)

(写真:Amazon/AFP/アフロ)