奇妙な光景に見えてしまいました。サッカーの2022年ワールドカップ(W杯)カタール大会の欧州予選での試合です。3月28日にホームのイスラエルとスコットランドが対戦しましたが、多くの観客がイスラエルを応援していました。歓声の後押しもあり、英プレミアリーグで活躍する選手がいるスコットランドと1対1で引き分けました。
 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、W杯の欧州予選はほとんど無観客で開催されています。その無観客に慣れた視聴者としては、パネルでも疑似音声でもないリアルの観客が歓声を上げている姿が新鮮に映りました。
 イスラエルでは世界最速に近いスピードで新型コロナ用ワクチンの接種が進み、既に国民の半分以上が1回目の接種を終えています。規制緩和も進んでおり、その一環としてサッカー試合の観客受け入れも決めたようです。一方、無観客が影響したのか、3月31日に圧倒的な戦力を持つドイツが、ホームで格下の北マケドニアに負けるという番狂わせも起きています。ドイツがW杯予選で負けるのは20年ぶりです。
 欧州各国で、ワクチン接種のスピードが規制緩和に大きな影響を与えています。人口の半数近くが1回目の接種を終えた英国では、3月29日に外出制限が解除されました。4月12日には、小売店が再開するほか、飲食店も屋外での営業ができるようになります。一方、接種の遅れるドイツやフランスでは感染拡大が止まらず、規制が強化されています。フランスではパリなどで外出制限が導入されています。
 こうした違いが明らかになるにつれ、ワクチン争奪戦が激しくなってきています。英国と欧州連合(EU)との間で、ワクチンの輸出を制限しているという非難の応酬が止まりません。特にEU加盟国ではワクチンの調達遅れが感染拡大の要因となり、経済回復が遅れているとの不満が高まっているため、ワクチン争奪戦は今後ますます問題となりそうです。
(ロンドン支局長 大西孝弘)

(写真:AFP/アフロ)