英王室は2月19日、ヘンリー王子とメーガン妃が王室の公務に戻らないと発表しました。夫妻は2020年3月末に公務を退きましたが、その王室との取り決めを1年後に見直すとしていました。今回の発表で、復帰の可能性はなくなりました。夫妻は王室と様々な確執があるようで、英メディアの報道も過熱しています。ヘンリー王子と兄のウィルアム王子の確執を描いた書籍「BATTLE of BROTHERS(バトル・オブ・ブラザーズ)」を読むと、ヘンリー王子が王室の中で複雑な思いを抱えており、メーガン妃との出会いから王室を離れていくまでの様子がよく分かります。
 英国では王室は常に関心の的で、先の書籍の著者であるロバート・レイシー氏が時代考証を務める動画配信サービス、ネットフリックスのドラマ「ザ・クラウン」が大人気です。このドラマはエリザベス女王を中心に英王室の人間模様を描いたものですが、ダウデン英デジタル・文化相が「ドラマはフィクションであるという注意書きを入れるべきだ」と抗議するほどの影響力があります(ネットフリックスは「歴史的な出来事に基づいたフィクションと会員のみなさんは理解している」と反論し、注意書きは入っていない)。
 日本でもそうだと思いますが、英国でもネットフリックスの存在感が日増しに高まっています。最近、英国でも値上げしましたが、コンテンツが充実しているからでしょうか、視聴者離れの話はほとんど聞きません。我が家の子供が心待ちにしていたアニメ「鬼滅の刃」も英国で配信され始めました。ネットフリックスの勢いに、英国の放送局は危機感を持っています。テレビ離れが加速することを懸念し、様々な放送局が動画配信サービスを始めています。
 ネットフリックスをはじめとする米西海岸発のプラットフォーマーの影響力は、英国でも高まるばかりです。米アマゾン・ドット・コムも生鮮食品の宅配サービスなど業容を拡大しています。コロナ禍の影響もありましたが、英国の店舗型小売りの不振が続く要因の1つは、アマゾンの攻勢でしょう。
 英国、特にロンドンは、米ライドシェア大手のウーバーテクノロジーズにとって大きな市場ですが、その扱いが度々問題になっています。2月19日には、英最高裁判所がウーバーの運転手は従業員だとする判断を下しました。同社は運転手を個人事業主として扱い、これまでコストを抑えてきました。従業員という見解が広まれば、最低賃金や有給休暇などを認めなければならず、ウーバーのビジネスモデルにダメージを与える可能性があります。
 日本から見ると、英国と米国は近い存在に映るかもしれませんが、英国民は米国に対して複雑な感情を持っているようです。英王室とヘンリー王子との価値観の相違は、米西海岸育ちのメーガン妃が王室に入った後に顕在化しました。英国の王室もビジネスも、米国からの新しい潮流にどのように向き合うかが大きなテーマになっています。
(ロンドン支局長 大西孝弘)

(写真:AP/アフロ)