みなさん、こんにちは。ロンドン支局の大西です。何度か告知をさせていただきましたが、今日から海外支局によるニューズレターをスタートします。1週間のグローバルダイジェストや自身の体験を振り返りながら、欧州の経済ニュースのツボを押さえていきたいと思います。
 欧州は今、新型コロナウイルス用ワクチンの話題で持ちきりです。「ワクチン(4)仁義なき争奪戦の欧州から見た、接種出遅れ日本の懸念」で書きましたが、私の住まいの徒歩圏内に接種センターが開設され、接種を受けにくる方々がゾロゾロと歩いてくるのを目の当たりにしています。2月9日に英国の接種人口は、1264万人を超えました。自分が接種していなくても、隣人や知り合いが接種した人も多く、欧州の人々にとってワクチンはもう他人事ではありません。
 その中で、大きな論争を巻き起こしているのが、英アストラゼネカのワクチンです。開発レースでは常に世界の先頭集団を走り、英政府は昨年12月末に承認。ジョンソン英首相は「英国の科学の勝利」と語り、胸を張っていました。
 しかし、様々な問題が噴出します。1つ目は、変異ウイルスに対する有効性。英国型の変異ウイルスに対しては有効性が確認されていますが、南アフリカ型の変異ウイルスには対しては有効性に疑問符がついています。まだ対象人数が少ないものの、ある調査で「効果は限定的」と評価されました。これを受け、南アはアストラゼネカ製ワクチンを輸入したにもかかわらず、2月7日に接種停止を発表しました。
 2つ目は、高齢者への有効性です。ドイツやフランスの保健当局は高齢者への有効性データが不十分という理由から、65歳以上への接種を推奨しないという判断を下しました。この判断は各国で分かれており、英保健当局は「全ての年齢に有効」と主張し、欧州連合(EU)の保健当局も有効性を認めています。
 3つ目は、生産トラブルです。同社は1月にベルギーの委託先の生産量が高まらず、EUに予定量の供給が遅れることを通知しました。これは新型コロナの感染拡大を防ぐために一刻も早くワクチンを接種したい欧州各国を怒らせました。同社のパスカル・ソリオ最高経営責任者(CEO)は、時間が経てば生産量を回復できると主張していますが、今後も生産トラブルがないとは限りません。
 日本政府は、1億2000万回分のアストラゼネカ製ワクチンを調達する契約を結んでいます。欧州での見解を受け、日本はどのように評価するのでしょうか。ファイザー製ワクチンだけでは、大規模接種に遅れが生じてしまうかもしれません。日本政府はアストラゼネカ製ワクチンの扱いを巡って、頭を悩ますことになりそうです。
(日経ビジネス ロンドン支局長 大西孝弘)

(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)