アジアと米国との間の外交が活発化しています。3月12日には日本、米国、オーストラリア、インドとの間で首脳会談が開かれ、18日には米国と中国の外交トップが会談しました。いずれも東南アジア、南アジアの関心を集めており、特にインドのメディアが厚く報じています。
 インドはもともと中国の影響力拡大に神経をとがらせていました。しかも2020年には印中国境で衝突が発生し、両国の関係は冷え切りました。中国製品を排除する動きが国内で起こり、政府は中国のスマートフォンアプリを次々と禁止しました。通信会社に対して中国の通信設備を導入できなくする規制も検討されており、強硬な姿勢を示しています。
 一方で、インドとの距離が近づいている国もあります。米国です。日米豪の首脳会談へのインドの参加はその象徴的な事例と言えるでしょう。また日本ではほとんど報道されていませんが、エネルギー分野でも印米接近を象徴するような報道がありました。
 15日のロイターの報道によれば、米国産原油のインドへの供給量が急増しているそうです。特に2月はインドの米国産原油の輸入量が過去最高を記録。米国はイラクに次ぐ第2位の原油供給元になりました。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、米国内のエネルギー需要が低迷したことが背景です。だぶついた原油の輸出先として、急速な需要回復が見込めるアジアに焦点が当たりました。ただアジア最大の需要国である中国には送れません。中国は米国産原油を敬遠しているためです。結果的に原油は中国に次ぐ大消費地であるインドに向かいました。
 シェール革命の恩恵を受けて米国は世界最大の産油国に成長しました。特にトランプ前政権時代は生産量が大幅に増えています。英エネルギー大手BPの統計によれば、2016年に1日あたり1234万バレルだった生産量は2019年には約1704万バレルに拡大しました。中東の産油国がこの間、生産量を減らしたのとは対照的です。
 インドは原油需要が底堅く、足元では減産を続けている石油輸出国機構(OPEC)加盟国に対する不信を強めています。特にOPEC盟主のサウジアラビアに対しては、「支援を要請したのに聞き入れられなかった」と非難し、同国産原油の輸入量を減らすことを検討していると報じられています。
 中長期的に見れば、インドも先進国と同様に化石燃料からの脱却を進めるとみられますが、急速な経済成長を続けるためには、引き続きある程度は化石燃料に頼らざるを得ません。同時に、インドは中東への依存度合いを減らそうとも模索しています。
 つまりインドから見れば、米国は中東に依存せず安定的に原油を調達する格好のパートナーになり得るのです。しかも両国は中国という共通の脅威に直面しています。今後もアジアの盟主、あるいは世界の盟主の座を巡って、印米と中国とはつばぜり合いを続けるでしょう。印米双方の相手に対する警戒心がないわけではありませんが、少なくとも共通の「敵」を抱えている限りは共闘関係を維持するものと思います。今回のインドにおける米国産原油の輸入量急増のニュースは、エネルギー安全保障分野での印米の蜜月を予感させます。
(日経ビジネス バンコク支局長 飯山辰之介)

(写真:アールクリエイション/アフロ)