こんにちは。バンコク支局の飯山です。東南アジアや南アジアの動きをまとめてお届けするニューズレターの配信が始まりました。バンコク発のニューズレターは基本的に毎週月曜日にお届けする予定です。週の初めに過去1週間のアジアの動きをざっと理解する、そんな役割を果たせればと考えています。
 今、注目すべき東南アジアの動きと言えば、ミャンマーにおける国軍のクーデターでしょう。2月1日、国軍はアウン・サン・スー・チー国家顧問ら与党の幹部を次々と拘束し、全権を掌握しました。2020年11月に実施された総選挙で大規模な不正があったためだと国軍は主張しています。ただ国民は納得していません。多くの人々が国軍の動きに強く反発し、ミャンマー全土で大規模な抗議デモが開かれるようになりました。この影響で銀行は窓口業務を停止し、製造業では工場の操業を見合わせる企業が相次いでいます。デモに参加しているのは一般市民だけではありません。報道によれば、一部の公務員や教員、警察官まで業務を次々とボイコットしているようです。輸出入や納税手続きは滞り、経済はまひし始めています。
 軍による独裁が約50年にわたり続いてきたミャンマーでは、過去にも大規模な民主化デモが発生しています。1988年に起きた「8888民主化運動」や2007年の「サフラン革命」では、民主化を求める人々を軍事政権が徹底的に弾圧し、多くの犠牲者を出しました。8888運動では3000人以上の死者が出たといわれています。同じ道をたどることだけは避けなければなりません。
 軍は容易には国民に手を出せないという見方はあります。「これまでの民主化運動の弾圧については『軍事政権に対する国民の暴動を抑える』という名目が曲がりなりにもあった。だが今回はないに等しい。不正選挙があったという理由について明確な根拠が示されないまま、軍は既存の体制を破壊して実権を奪った。こんな状況で軍が人々を抑えつけようとすれば反発は一層強まり、国は大混乱に陥る。軍もそれはよく分かっているはずだ」。ミャンマーの実情に詳しい複数の関係者がこう指摘しています。
 とはいえ、国軍が強硬な手段に出ないという保証はどこにもありません。既に警察は放水車やゴム弾を使用してデモの排除に動き出しています。首都ネピドーではデモに参加していた19歳の女性が治安当局の銃撃を受け亡くなったとの報道もあります。それでもデモが収まる気配はなく、国民の怒りは高まるばかり。「過去の民主化運動以上の勢いを感じている」(ヤンゴンの在住者)という声もあるなか、国軍はどう国民を納得させてスムーズな政権運営を実現するつもりなのか。かつてのように恐怖で人々を縛り付けるのか。世界が注視しています。
(日経ビジネス バンコク支局長 飯山辰之介)

(写真:AFP/アフロ)