【メルマガ独自解説】
 楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は、どうやってゲームチェンジャーになったか――。2021年秋、あるベンチャー企業トップと食事を共にした際、ふとそんな話題になりました。
 三木谷氏と交流があるというその社長は、ビールグラスを片手に熱いレクチャーを続けてくれました。30分ほどたったころでしょうか。そこで迎えた結論は、こうでした。「ひたすら規制に挑み続けてきた人」。簡潔過ぎて少し拍子抜けでしたが、妙に納得できたのを今でも思い出します。
 2023年1月30日号の特集は「規制サバイバル 厳格化する世界を攻略せよ」です。規制は経済界から「イノベーションや新規のビジネス、顧客開拓の邪魔になる」と嫌われてきました。1980年代に土光臨調からの流れを受けた中曽根康弘内閣が、市場原理主義に基づいた規制緩和・構造改革の施策を推進。90年代に入ると、細川護熙首相の私的諮問機関・経済改革研究会が「経済的規制は原則自由、社会的規制は必要最小限」という方針を示しました。これで規制が「悪役」という位置付けが定まりました。
 こうした「緩和の大号令」で、日本経済が発展してきたことは間違いありません。しかし新自由主義・新古典派の経済政策が主流だった世界は、今や対立する大国の思惑に左右されて、保護貿易主義・ブロック経済化という旗の下、新たな規制の網に覆われつつあります。
 その一方で、時代は激動期に入り、新たなチャンスが生まれやすい環境にあります。テクノロジーが発展するスピード感を踏まえると、規制の緩和を待っている時間はありません。規制を使いこなし、たとえ規制が強化されても粘り強く柔軟に対応してこそ飛躍できるはずです。今回の特集が、そのヒントになれば幸いです。
(日経ビジネス記者 鳴海 崇)