【メルマガ独自解説】

 東京が五輪・パラリンピックの招致に成功した2013年9月、日本中が祝賀ムードに包まれたのを覚えています。これに乗じて当時の安倍政権は東京五輪を、デフレマインドからの脱却に向けた「アベノミクスの第4の矢」に位置づけました。開催に向けて社会全体が前向きになり、個人の消費と企業の投資が促されると期待したのです。

 ところが物事はそううまくいきません。大会エンブレムに絡む騒動を皮切りに、東京五輪を巡って次々と問題が起きました。国立競技場建て替え計画の白紙撤回、膨張する大会経費、1年間の開催延期、大会組織委員会の森喜朗会長による女性蔑視発言、開会式の演出家らの辞任・解任、無観客試合……。これでもかというほどの数の問題が噴き出しました。

 そして日本人のデフレマインドが払拭されることもありませんでした。

 22年夏からは汚職と入札談合疑惑が持ち上がっています。開催が決まった時、こんな大会になると、誰が想像したでしょうか。

 しかし、残念な現実であったとしても、直視すれば、そこから何かしらの教訓が導き出せるはずです。日経ビジネス1月30日号の第2特集「繰り返される『多様性なき調和』の悲劇 五輪汚した『普通の人々』 権威への服従が醜態招く」では、私なりに現実を直視してみました。ぜひご一読ください。

(日経ビジネス記者 吉野次郎)