【メルマガ独自解説】

 日経ビジネス1月16日号の第2特集「リモート環境で激増 あなたの会社の『薄い会議』を無くそう」では、リモートワーク普及の「副作用」によって、膨張した会議のあり方をテーマにしました。

 日経ビジネス編集部は、リモートワークとオフィス出社を融合したハイブリッドワークとなっています。記者職は、取材訪問が最も重要な業務の1つ。取材先もリモートで対応してくれるので、新型コロナウイルス感染拡大の直後は、1日に6~7件の取材を詰め込みました。「通勤や移動の時間が節約できるのだから、たくさん取材を入れよう」と考えたわけです。

 しかし1カ月とたたないうちに、頭と体がもたないと気付きました。1つの取材は1時間かもしれませんが、事前に取材先の置かれている環境を調べ、どんな質問をするかの準備は欠かせません。取材終了後は、聞いた話を整理し、考えを巡らせ、次の取材や記事執筆につなげていきます。1時間の取材のためには、倍以上の時間が必要です。リモートワークで取材を限界まで詰め込んだ結果、当たり前のことに気付かされました。以来、事前準備の入念さが増したと感じています。

 そしてコロナ禍の狂騒が一段落した頃。出社比率が高まると、オフィスのある光景に気付きました。「偉い人たち」がいつもパソコンに向かって話しかけているのです。画面に向かって口角泡を飛ばし、終わったかと思えば、また次の会議。スケジュール管理ソフトの上司の欄は、会議で埋め尽くされています。

 スケジュール管理ソフトの発達で、気軽にリモート会議が設定できるようになりました(物理的には。精神的に気軽かどうかは職場によるでしょう)。特に役職者は様々な報告を受けたり、部下に指示を出したり、社内の人間と関わる仕事が多い立場です。さらにハイブリッドワークの普及は、オフィス内の「ちょっとあれどうなったっけ」という会話を激減させました。社員同士の非公式な会話が減り、会議という公式の集まりに依存せざるを得なくなったのです。

 一つひとつの会議が大切で必要だとしても、会議前のインプットや会議後の熟考の時間が取れなければ、中身は充実するでしょうか。「薄い会議」に追われ、マスクの奥で喉をからす生活は、生産性を高めるでしょうか。こうした問題意識から取材が始まりました。

 では、会議をどう開くべきか。これを追求するには、なぜ会議を開くのか、開いた結果どんな成果を求めているかという根本的な問いが生まれます。議論の質と量を大切にするのか、意思決定という会議の「成果」を追い求めるのか、あるいは社員同士の偶然の出会いを増やしたいのか。会議のあり方は、組織のあり方、つまりは社風やパーパスに直結することが分かります。どんな企業でも存在する会議。そのあり方を問い直すことは、社員の成長を促し、組織の生産性を高める重要な近道になるはずです。

(日経ビジネス記者 鷲尾龍一)