【メルマガ独自解説】
中国北東部にある山東省威海市を訪れたのは昨年11月のことです。空港は搭乗ゲートが数カ所、人口は約280万人の地方都市ですが、クルマで1時間走ると台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業を筆頭に、数多くの企業がプリンターの開発や製造の拠点を設けている現場に到着します。
「ずいぶんと変わったところに行くねえ」。空港ではそう話していたタクシー運転手も、現場を訪れると「こんな場所があるとは知らなかった」と驚くほど。中国が日本企業に対してプリンターの開発から製造までの工程を中国国内で完結させることを迫っていることをご存知の方は多いかもしれません。そんな「禁じ手」とも言える揺さぶりを企業にかける一方で、したたかに技術を獲得する準備も急いでいます。
2023年1月16日号の特集は「チャイノベーション 2023 中国 技術覇権の今」。ゼロコロナ政策は事実上崩壊し、米中対立が泥沼化する中でも中国は技術覇権に並々ならぬ執念を燃やし続けています。EV(電気自動車)や半導体だけでなくプリンターや医療機器や工作機械など、今まで中国の存在感が薄かった技術領域にも触手を伸ばしています。
多くの領域でライバルとなるのが日本企業。技術流出を防ぎ、競争力を維持するためにも、今一度、中国の実力を精緻に分析する必要があるでしょう。この特集がその一助になれば幸いです。
(日経ビジネス上海支局長 佐伯真也)
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