【メルマガ独自解説】
台湾有事――。
 メディアでこの言葉を見ない日はないくらい、取り上げられることが多くなりました。12月26日・1月2日合併号の特集「大胆予測2023 『有事に備えよ』」のパート1では、「有事」の1つとして、台湾有事を取り上げました。「台湾有事となったらどんな影響があるの?」という声も聞こえてきます。

「なぜかな?」

 私が感じた疑問に対する答えの1つは地図の見方にあると考えます。グーグルマップで「台湾」と入力して検索すると、台湾海峡を挟んで中国大陸の沿岸には北から福州市、厦門市、香港が並んでいます。東には先島諸島が連なり、そして沖縄本島があります。南にはフィリピン・ルソン島の北の突端が見えます。「どんな影響があるの?」と尋ねる人は、頭の中にこの地図を思い浮かべているのではないでしょうか。
 地図をズームアウトしていきましょう。次第に九州、中国・四国が視野に入ってきて、東京が表示されます。さらに表示範囲を拡大すると、北京が見えてきます。さらに続けると南シナ海の全域、その西の出口であるマラッカ海峡が視野に入ってきます。
 今回の特集ではこちらの視点で見ました。台湾有事となれば、影響は台湾周辺に収まりません。マラッカ海峡を通り、台湾の周辺を抜けて日本に至るシーレーン(海上交通路)が機能しなくなる――。台湾や中国との貿易はもちろん、東南アジア諸国や中東との貿易も途絶します。
 影響は人にも及びます。上海や北京で働く日本人が帰国できなくなる――。中国各地にある工場が徴用される――。そして、太平洋の向こうから米軍が展開してくる――。本特集ではこうした可能性を取り上げます。
 台湾有事は決して起こしてはなりません。
 その努力をする一方で、最悪の事態を想定して「備える」必要があります。本特集がその一助になれば幸いです。
(日経ビジネス記者 森 永輔)