【メルマガ独自解説】

 「優秀な人材が次から次へと出てきている」。日経ビジネス10月31日号の第2特集「東京海上、『内弁慶』返上 M&A規律保ち海外で成長続ける」の主役、東京海上ホールディングスについて、ある市場関係者がこう評していました。保険自由化の荒波にさらされた同社が2000年代以降、持続的かつ安定的な成長を目指し、活路を見いだした海外保険事業。M&A(合併・買収)が事業拡大のテコとなるだけに、この戦略に欠かせないのは買収先の「目利き」ができる人材の育成です。

 その市場関係者は多くの東京海上関係者と面会してきたと言いますが、「会う人皆が優秀」とのこと。就職活動をする学生に聞いた人気企業ランキングでは常に上位に位置する同社。入社後も海外事業含め、刺激的な職場環境があるからこそ、優秀な人材が仕事でさらに成長して業績に貢献、学生からの人気度はさらに高まり、ますます優秀な人材を確保しやすい状況を生むという好循環ができあがっているのでしょう。

 東京海上の海外事業の特筆すべき点は状況によって買収だけでなく、子会社、あるいは事業単位での売却もいとわないという点です。時の経営者が「レガシー」を残そうと海外M&Aを仕掛けたものの、目立ったシナジーを残せず業績も悪化。任期切れとなり後継のトップが就くと早々に特別損失を出しながらその子会社を二束三文で売却、あるいはそののれん代を減損処理し、本社のV字回復を演出する――。そんな日本企業の姿を何度見たことか。

 M&Aは目的ではなく、あくまで何かを成し遂げるための手段でしかありません。東京海上の場合、「リスク分散」という目的が明確にされているからこそ、適切なタイミングで売却にも踏み切れるのでしょう。そんな戦略の肝を特集内で解説していますので、ぜひともご高覧いただければと思います。

(日経ビジネス記者 高尾泰朗)