【メルマガ独自解説】
 「テレビゲームの中で稼いだコインを現実に持ち出せたらどんなに素晴らしいだろう」。そんな風に妄想したことのあるゲームファンは多いことでしょう。あるいは何時間もプレイしても希少なアイテムを探し出すことができず、「現実のお金を払ってでも欲しい」とかなわぬ思いにじれたことのある人も少なくないと思います。かくいう私もその一人です。
 そんなファンの夢を体現してみせたのが「NFT(非代替性トークン)ゲーム」や「Play to Earn(稼ぐために遊ぶ)ゲーム」と呼ばれる東南アジア発のゲームです。ブロックチェーン(分散型台帳)技術を活用しており、ゲーム内のコインやアイテムは唯一無二のトークンとして発行されています。アイテムを売買したり、ゲーム内の対戦で勝利したりすることで獲得したコインは、暗号資産(仮想通貨)交換所などを介して法定通貨に交換できます。
 トークンの価値はゲームそのものの人気に大きく左右されます。支持を集めるゲームのトークンには値上がりを期待した「買い」が入りやすく、そうでないゲームのトークンは「売り」が優勢になってしまう。この点を鑑みると、トークンは株式に近い特徴を持っているとも言えます。
 生まれて間もないNFTゲームは新型コロナウイルス禍を契機に急速に注目を集めました。感染拡大を封じ込めるために導入された都市の封鎖措置により仕事がなくなり、自宅を出ることすらままならなくなった多くの人々を救ったからです。関係者の話をまとめると、意図して救ったというよりは、結果的に「救ってしまった」というのが実情のようです。
 ではなぜ、どうやってNFTゲームは東南アジアの人々を救うことになったのでしょうか。現地では何が起きていたのでしょうか。日経ビジネス7月11日号の第2特集「『草の根』デジタル通貨、東南アジアで胎動 持たざる者が革新担う」にまとめました。実は東南アジアでは今、通貨のデジタル化を巡る様々な試行錯誤が始まっています。お読みいただければ、その熱気を感じていただけるのではないかと思います。
(日経ビジネス バンコク支局長 飯山 辰之介)