【メルマガ独自解説】
訃報というのは突然なものだと感じさせられました。日経ビジネス6月20日号の第2特集「進撃のマクドナルド コロナ禍に勝ったDX」の取材を進めていた最中の4月18日、日本マクドナルドホールディングス(HD)副社長兼COO(最高執行責任者)を務めていた下平篤雄さんが急逝されました。記事中のインタビューは亡くなられる数週間前に行ったものです。「現場取材が終わったら、もう一度インタビューさせてください」という私のお願いに「また来てください」と快諾をいただけた後の訃報。大きなショックを受けました。
その後、かつては資生堂や日清ホールディングスでマーケターとして活躍し、現在は日本マクドナルドで取締役・上席執行役員CMO(最高マーケティング責任者)を務めるズナイデン房子さんにインタビューをした時のことです。「下平さんの人柄も入社を決めた理由だったそうですね」と私が問いかけると、それまで笑顔だったズナイデンさんは声を詰まらせて「本当にマクドナルドのことを愛していた方でした」と涙ながらに語りました。その姿から、下平さんの人望の厚さを改めて感じた次第です。
下平さんは2015年からは副社長兼COOとして、当時は社長兼CEO(最高経営責任者)だったサラ・カサノバ現会長と共に低迷期の日本マクドナルドを回復に導いた功労者で、記事のテーマでもある「未来型店舗体験」の主導者でした。今日の同社の快進撃は下平さんの生前に取り組んでいた改革が花開いた結果ともいえます。だからこそ、もう一度お会いしたかった……。突然の訃報に心からそう思いました。
(日経ビジネス記者 神田啓晴)
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