【メルマガ独自解説】
 日経ビジネス5月16日号の第2特集「産業界の『村八分』事件 よそ者排除でゆがむ市場 東芝や国交省の『罪』」では、日本の産業界に残る古い因習や排他性などの村社会的な体質を浮き彫りにしました。大分県のとある集落で実際に起きた村八分騒動を軸にストーリーを展開しています。
 初めから「村八分」というテーマは決めていたのですが、どのような方向性で取材を進めるかについては、当初2つの路線で迷っていました。1つは村八分騒動を通じて、産業界と村社会の類似性を検証するという内容で、最終的に採用したのはこちらの路線です。
 もう1つは村八分騒動を通じて、都市部から田舎に移住する危うさを指摘するという、全く違ったストーリーを探っていました。
 新型コロナウイルスまん延の影響でテレワークが本格化し、職種によってはどこからでも仕事をすることが容易になりました。都会の喧騒(けんそう)を離れて、静かな田舎暮らしを希望する人が増えていると聞きます。
 しかし、集落によっては思わぬ落とし穴が潜んでいます。今回は登場しませんが、取材ではゆかりのない山村に都会から移住した方にも会いました。最初は村民とうまくやっていたのですが、あるトラブルをきっかけに村八分に遭い、苦しんでいました。「村八分が村人たちの娯楽になっている」とのことです。小学生のいじめと変わらぬ所業といえるでしょう。
 その山村からは美しい景色を望むことができます。ただ豊かな自然ばかりに目を奪われて、移住先を決めるのは賢明ではないようです。
 今回の特集から、憧れの田舎暮らしに潜むリスクも読み取っていただければ幸いです。
(日経ビジネス記者 吉野次郎)