【メルマガ独自解説】
 「もう、削りしろがない」。3月、ある日用品大手企業の首脳に取材した際のことです。ため息交じりのコメントを聞き、メーカーがそこまで追い詰められているということに驚きました。
 この会社は原材料高に苦しんで製品の値上げに踏み切りました。しかし、値上げした製品の取り扱い中止を大手ドラッグストアが表明したのです。「インターネット通販や小売り流通の寡占化によって、最終価格を決められないメーカーの立場は弱まり、自分たちの利益を削ってでも安く納めて製品を置いてもらっていました。未曽有の原材料高や燃料高で、ディスカウントはもう限界。にもかかわらず、少しの値上げも認めてくれない」(首脳)。
 そこから2カ月、物価高騰に関する取材を重ねました。日経ビジネス5月16日号の特集「絶望物価 負のスパイラルが始まった」では、様々な企業の対応策やメーカーと小売の攻防を取り上げました。
 デフレ慣れした日本では、原材料価格の上昇をメーカーが「のみ込む」のが当たり前で、値上げは禁じ手でした。しかし、前代未聞の原材料高によって、かつての常識は崩れ去り、いまや企業は相次ぎ値上げに動いています。一方で、変わらないのは国際水準に引き離され続ける低賃金。物価高騰のダメージは家計、企業業績へと負の連鎖のように広がっていくはずです。この「悪い物価上昇」を打開する道はあるのか。今回の特集をご一読いただき、考えるヒントにしていただければ幸いです。
(日経ビジネス記者 岡田達也)