【メルマガ独自解説】
 改革すべきは入れ物なのか、中身なのか――。今年4月、東京証券取引所は、東証1部、2部、ジャスダック、マザーズの4市場を、実質最上位のプライム、中堅企業のスタンダード、新興成長企業のグロースという3市場に再編しました。プライムを、世界の投資家が資金を投じたいと思う成長力やガバナンス(企業統治)体制を持つ優良企業の市場とするためです。
 しかし、日本の株式市場が抱える本質的な問題は、上場しているというだけで成長感の無い大量の企業が市場の底に滞留しているということではないでしょうか。中には11年連続赤字でも東証2部に上場を続けている企業もあります。それほどの長期赤字ではなくても、ほとんど売上高が伸びない企業など珍しくありません。日経ビジネス5月2日・9日合併号の第2特集「株式市場に根を張る低成長企業 動き出した東証再編 ダメ経営の一掃なるか」で改めて分析したところ、旧東証1部上場企業は2000年3月末の1401社から22年3月末に2176社まで増えましたが、1日当たり売買代金が1億円未満の企業も848社から948社へ増えました。ROE(自己資本利益率)を見ると、小型の企業ほど長期にわたって大企業より低いという結果も出ました。
 市場再編は必要なことですが、日本企業にとってより重要なのは、低成長企業が成長力を取り戻す経営改革をすることです。東証再編では、流通時価総額、1日当たり売買代金など新たに定めた上場維持基準に届かない企業は、それを満たすための計画書を出せば、希望市場に移行できることとなりました。それはプライムで295社、スタンダードで209社にも上りました。
 時価総額が低いのは、成長力が無く、将来性が市場に評価されないためというケースがほとんどです。その意味で計画書を達成することは、株式市場と日本経済の宿痾(しゅくあ)でもある低成長企業の改革の1つのきっかけにはなるでしょう。ただし、企業が示した達成時期はバラバラで長いところでは10年というケースもあります。東証自身はまだ期限を定めてもいません。流通時価総額や売買代金が基準よりはるかに低い企業は、そんな中で本当の改革ができるのか。経営力を引き上げるためには何が必要なのか。特集では、様々な企業の実例を見ながら分析しました。
(日経ビジネス編集委員 田村賢司)