【メルマガ独自解説】
 日経ビジネス4月25日号の戦略フォーカス「父への思い、新治療で結実 楽天メディカル|がん光免疫療法の開発」では、2020年9月に厚生労働省から製造販売承認を取得した楽天メディカルジャパンの抗がん剤「アキャルックス」の開発物語を紹介しました。
 記事中でも少し触れましたが、承認は条件付き早期承認制度という日本独特の制度を利用して行われました。海外では他の抗がん剤を用いた標準的な治療法との比較試験が進行中で、承認取得には至っていません。このため、「比較試験が終了してエビデンス(証拠)が得られる前に実用化したのはいかがなものか」と指摘する声も聞かれます。
 この点について質問すると、米楽天メディカルの前身である米アスピリアン・セラピューティクスの創業者で、現在も米楽天メディカルの副会長兼CSO(チーフ・サイエンティフィック・オフィサー)を務めているミゲル・ガルシア・グズマン氏は、「日本の規制当局が、リスクとベネフィット(利益)を審査して、利益が上回ると判断したので承認されたと理解している。頭頸(けい)部がんに対しては十分に満足できる治療法がないので、他に選択肢がない患者に治療法を提供するのは意義があることだと思っている」と述べていました。
 一方で、がん領域では先行する免疫チェックポイント阻害薬などが対象のがんを細かく絞り込んだ臨床試験を数多く実施していて、それらに対抗するエビデンスをつくるには臨床試験に莫大な時間とコストを要する状況になっています。その中で、資金力で見劣りするベンチャーがシーズ(種)を実用化するためには、早期承認制度は有効な手段だと思います。
 条件付き承認という点で、アキャルックスが得たのは仮免許といえますが、そうやって将来の可能性のあるシーズを育てていく仕組みも重要だなあと、今回の取材を通して思った次第です。
(日経ビジネス編集委員 橋本宗明)