【メルマガ独自解説】
 皆さんは、伊藤忠商事にどういう印象をお持ちでしょうか。昭和風に言えば「イケイケ」、今風に言えば「キラキラ」な人材が集まる体育会系企業の代表格。こんなイメージの方も少なくないでしょう(キラキラももう古いかもしれませんが・・・・・)。
 実際、猪突(ちょとつ)猛進の社風がバブル期の不動産や金融商品投資にのめり込む要因となり、巨額損失を招きました。
 経営危機から脱した後の成長は、派手さとは縁遠い堅実さによって実現しました。資源・エネルギー分野では、三菱商事や三井物産にかなわないとみて「非資源」を注力分野に掲げると、コスト削減とリスク管理を徹底。時価総額は20年間で10倍まで伸びました。日経ビジネス4月25日号の特集「伊藤忠の下剋上 三菱・三井に勝つ『デジタル商人道』」ではそんな伊藤忠を取り上げています。
 巨額投資で大きなリターンを狙う資源投資は派手で目立つ一方、伊藤忠が選んだ商流をこつこつ整備する戦略は、地味で成果が出るまで時間がかかります。「社風」と異なる経営方針に、不安を感じる社員もいたでしょう。経営者はどう戦略を浸透させ、会社を引っ張っていくのか。岡藤正広会長CEO(最高経営責任者)の発信力は大きな要因となりました。
 「下克上」ともいうべき他社を圧倒する伊藤忠の成長力ですが、君主を打ち倒したわけではありません。先行他社とは、異なる道を選び、違う成長曲線を描きました。競争戦略とは何か。今回の特集がヒントになれば幸いです。
(日経ビジネス記者 鷲尾龍一)