【メルマガ独自解説】
 「両利きの経営」。日経ビジネス1月31日号の第2特集「自動車部品業界、EV化で『変身』待ったなし 技術開発に心血注ぐ」の取材では、何度もこの言葉を経営陣から耳にしました。
 カーボンニュートラルは一朝一夕でできるものではありません。2030年以降もハイブリッド車(HV)やエンジン車は残り続ける見通しで、自動車部品メーカーはこの分野での「深化」が求められます。一方で市場が急拡大する電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)に対しては、モーターやインバーターといったユニット品やその構成部品の開発という「探索」が欠かせません。経営資源をどう配分し、生き残っていくのか、各メーカーとも極めて難しい判断を迫られています。
 そうした複雑な局面にあって、環境変化に対応するため新たな事業軸を打ち立てカメレオンのように生態を変える企業もあれば、既存技術をフル活用してEVの常識そのものを覆すゲームチェンジャーに脱皮しようとするメーカーもあります。1社では100年に一度の変化に太刀打ちできないと、提携関係を模索する動きも盛んになっています。激震は雇用や自動車産業特有の取引慣行にも及びそうです。特集をお読みいただき、ご感想をお寄せください。
(日経ビジネス副編集長 上阪欣史)