【メルマガ独自解説】
 「メディアが悪く書くから日本の対中感情が悪くなる」。日中の政府や企業関係者に取材する中で、お決まりのように言われるせりふです。
 「デジタル技術を駆使した監視体制を整備し、言論や経済への統制を強めている強権国家」という色彩を急速に強める中、そのニュースが多くなることはやむを得ない面があります。
 一方、中国で生活する中で制約を感じるケースはあまりなく、大多数の人は経済発展とデジタル化によって便利さが増す中で暮らしていることも事実です。日々のニュースとして「人々が平穏に暮らしている」ことを取り上げることは難しく、冒頭のクレームが素朴な違和感に基づくものであることも、生活者の実感として理解できます。
 体制が内包する矛盾の多くは「境界の線上か外」にいる人々が引き受け、強権主義の下ではその苛烈さも際立ちます。中国の場合は少数民族や人権活動家、発展から取り残された農村などを巡る問題が指摘されてきました。では今、経済分野で噴出する矛盾は何を意味しているのでしょうか。
 改革開放により一党独裁体制を維持しながら資本主義にカジを切った中国。本来、資本主義のアンチテーゼから生まれたはずの社会主義へと旋回する中で何が起きているのか。1月17日号の特集「米中分断の嘘 習近平『新文革』の実像」では、唯一、中国に支局を持つ主要経済誌として、現場取材から「今」を切り取りました。
(上海支局長 広岡延隆)