【メルマガ独自解説】
 記者として働くようになって13年になります。これまで取材時間の多くを霞が関や地方自治体に割いてきましたが、政策取材をする上で苦手意識があったのが、実は農業分野です。農地法を始め、独特な制度を敬遠していたこともありますが、そもそも農業における“正解”が何なのかが分からなかったことが一番の理由です。
 農業は多面的な産業です。食の安心安全はもちろん、景観の保全、食糧安全保障、治水や利水は防災の観点からも重要と、単なる競争や経済合理性だけで済まされる世界ではありません。
 こうした産業の特性もあってか、日本の農業政策は一貫性を欠き、しばしば市場や農家を混乱させてきました。人呼んで「猫の目農政」。明るさで瞳の大きさを変える猫の目のように、コロコロと変わると揶揄(やゆ)する言葉です。
 そんな農業分野に身を置きながらも、ビジネスにブレを感じさせないのが農機国内最大手のクボタです。就農者の高齢化と農家数の減少、一方で進む経営規模の拡大という現象をきちんと捉えて、農業DXに取り組んでいます。
 平野部の大規模なコメ農家をメインにしたビジネスモデルではありますが、取材の最中に研究開発本部長を務める木村浩人常務執行役員がふと漏らした言葉には懐の深さを感じました。「中山間地の棚田の風景も何とか次世代に残したい」
 11月29日号の第2特集「知られざる2兆円ガリバー企業 クボタ、デジタル化で開く ニッポン農業の未来」では、導き出した農業の正解に向けてまい進するクボタの姿を追いました。
(日経ビジネス記者 奥平 力)