【メルマガ独自解説】
 「ガソリン高くて震える」。最近ツイッターでこんな投稿をいくつも見かけました。10月の企業物価指数は前年同月比8%上昇し、約40年ぶりの伸び率となりました。ガソリンだけではありません。新型コロナウイルス禍から世界各国の経済が回復し、鉄鋼や非鉄金属、合成ゴムなど幅広い素材価格が上昇しています。脱炭素に向けて原油が増産しづらいこともこの記録的な高騰の背景にあります。さらに今後進んでいく気候変動対策に伴って上昇したコストを企業が製品に転嫁する動きが強まっていくと、いずれは世界的にインフレ基調になるのではとの懸念が高まっています。
 私たちの便利な暮らしを維持しながら脱化石燃料を進める。そのためには、重油に代えてCO2を排出しない燃料で航行する船舶、石炭を使わないで鉄鋼を生産する新たな製鉄法など、脱炭素技術やつなぎ役の移行技術を開発して実用化しなければなりません。そこに至るまでには巨額の研究開発費や設備投資が必要です。その資金の出し手となるのが、投融資を通じて温暖化ガス排出量削減に貢献する「グリーンマネー」です。
 11月22日号の第2特集「『脱炭素なくして資金なし』グリーンマネーの奔流」では、気候変動対策を進める機関投資家や金融機関、企業に焦点を当てて取材しました。ご一読いただければ幸いです。
 記事中に登場する日本郵船は、2030年代半ば頃からアンモニア燃料エンジン船や水素燃料電池搭載船など次世代船への切り替えを目指しています。常温で液体なので扱いやすい石油に比べて水素やアンモニアは危険性が高く、グリーン燃料船の実用化は容易ではありません。「全長数百メートルの巨大な船舶で、水素やアンモニアを安全に使えるようになるまでには数々の技術的なハードルを乗り越えなければならない。もちろん資金もかかる」。同社の担当者はこう話しています。
 企業は気候変動対策に関わる莫大な移行コストを国の助成金だけに頼るわけにはいきません。民間から資金を機動的に調達できるかが、企業には非常に重要になります。グリーンマネーは企業がCO2削減の取り組みや情報開示をおろそかにしていないか、投資先を厳しくチェックし変革を迫る役割も担います。企業が脱炭素への長い道のりから脱落しないように見守り、かつ企業の負荷が高まり過ぎないように、金融市場が後押ししてくれる環境が整えば、過度なインフレ圧力を抑える一助にもなるのではないでしょうか。
(日経ビジネス記者 岡田達也)