【メルマガ独自解説】
 「ウィーチャット(微信)」で知られ、時価総額は60兆円以上にも及ぶ中国ネット大手、騰訊控股(テンセント)は8兆円超の売上高の3割をゲーム事業で稼ぐ、世界最大のゲーム企業としての側面を持っています。動画配信大手の米ネットフリックスは7月にゲーム事業への本格参入を表明。「GAFA」に代表される米国IT大手はこぞってゲーム事業を新たな鉱脈に育てようと動き始めました。
 ゲームはそれだけ、ビジネスとして魅力的だということです。2021年、その市場規模は世界で20兆円近くに達するとの推計も。同じ娯楽と比べると、音楽市場の約8倍、動画配信市場の2倍以上にもなります。子どもや「ゲーマー」と呼ばれるような愛好家のためだけの娯楽ではもはやありません。読者の皆さんも、電車内や街中、職場などで暇さえあればスマートフォンでゲームにいそしむ「大人」を見かける機会は増えているはずです。
 そんなゲームは人々を楽しませるため、様々な最新テクノロジーを取り入れ、育んでいきました。ゲームで培われた技術は今、様々な産業革新を下支えする存在になりつつあります。米エヌビディアがゲーム向けで培ってきたGPU(画像処理用半導体)がAI(人工知能)の処理に用いられるようになっているのはその代表例でしょう。とはいえ、優秀なゲーム人材は業界外になかなか出ていかないのがこれまででした。ゲームが好きで業界に入り、良いゲームを作るために技術を蓄えてきた彼らは、その能力を他産業に使おうという発想にならないようなのです。
 ただ、世界のテックジャイアントがこぞってゲーム事業に注力し始めたことは、その壁を一気に崩し、様々な産業に高いゲーム関連技術が流入していくきっかけとなる可能性もあります。任天堂などを擁する「ゲーム大国」日本は、市場構造の変化への対応やゲーム技術の他産業への活用が遅れているとの指摘も。9月27日号の特集、「日本勢は『ガラゲー』か? ゲーム進化論」ではそんな「巨大産業」を取り巻く環境の変化を追いました。
(日経ビジネス記者 高尾泰朗)