【メルマガ独自解説】
 2000年代前半、私は「日経ビジネス」に配属されてから数年間を自動車担当として過ごしました。ガソリン車の部品数は3万点といわれますが、セーレン(福井市)は当時既に自動車内装材の雄として名をはせた企業でした。様々な企画で同社を取材するうちに経営トップの川田達男会長兼CEOの人柄に引かれました。語るビジョンがモノクロームではなく、彩色された写真のようにイメージできたからです。
 私はその後、10年ほど他媒体で経験を積んでいたので、川田会長に再会するのは久しぶりでした。8月2日号の「不屈の路程 セーレン・川田会長 『生意気な若造』だった新人時代」では社内のアウトローとして入社直後から組織改革に挑んできた半生について、当時の思いを語っていただきました。3時間超にわたるインタビューでしたが、疲れも見せず力強く語ってくれました。「人工衛星まで開発しちゃったんですよ」と語る姿を拝見して、今なお未来を見据える気力に驚かされました。
 社会に出て仕事をすれば、理不尽なことはいくらでも起こります。時代を先取りしたアイデアを実現したいならば、抵抗勢力による圧力は“上”からやってくるでしょう。川田会長も何度も上司とぶつかりながら染色専門の下請け企業だったセーレンを、繊維の総合企業に育ててきました。若き血に勇める行動で周囲との摩擦が発生しても恐れるな。川田会長の生き方から、まだまだ学ぶことは多いと感じました。
(日経ビジネス副編集長 江村英哲)