【メルマガ独自解説】
 「メディアが散々もてはやすから進出してみたけれど、インフラは整備されていないし、消費者の購買力も本当に小さい。聞いていた話と随分違っていたぞ」
 もう数年前になりますが、ミャンマーに進出したある企業の関係者から、こう不満をこぼされたことがあります。もちろん冗談です。メディアが吹聴したからといって、何も調査せずに新しい市場に進出する企業などありません。それでも、この関係者は何か言わずにはいられなかったのでしょう。
 「最後のフロンティア」。2011年、ミャンマーが民政移管を果たすと、メディアはこう喧伝(けんでん)し、早く進出しなければ乗り遅れると企業を煽(あお)りました。筆者も例外ではありません。手放しというわけではありませんが、ミャンマーの成長期待を前面に押し出すような記事を書いたことがあります。
 潜在的な成長力は間違いなくあります。しかし2月1日、国軍がクーデターを起こしたことにより、ミャンマーは大混乱に陥ってしまいました。成長期待は後退し、「失敗国家」の烙印(らくいん)を押されつつあります。6月14日号のスペシャルリポート「恐怖と混迷のミャンマー 立ち尽くす日本企業」では、今ミャンマーが直面している苦境と、ここに進出する日本企業の苦悩を描きました。
 ただ苦悩しているのは日本企業だけはありません。「最後のフロンティア」ともてはやしてきたメディアもまた、暗転したミャンマーの未来をどう描くべきか頭を悩ませていることと思います。それでも、日本企業も政府も、もちろん私たちメディアも現実から目をそらすわけにはいきません。スペシャルリポートは5ページで完結しますが、ミャンマーの混乱に収束の気配は見えません。日本と深い関係にあるミャンマーが今後どのような道をたどっていくのか。「当事者」の一人として、取材を続けたいと考えています。
(日経ビジネスバンコク支局長 飯山辰之介)