【メルマガ独自解説】
 テレワークは過去にはやり廃りを繰り返してきました。総務省の「通信利用動向調査」によると、テレワークを導入する企業の割合は2009年の「新型インフルエンザのパンデミック」などを契機にいったん上昇するものの、事態が沈静化した後は導入率が顕著に低下します。では、今回のコロナ禍はどうでしょうか。日経ビジネス2021年5月3日号の特集「テレワークやめるか続けるか 見えてきた成功の条件」での取材を通じて、コロナ禍の収束時期が不透明であるにもかかわらず、テレワークの利用頻度が下がり始めている傾向が分かりました。
 「日本人はオフィスに帰ってくる」。オフィスを中心に日本の不動産市場に1兆円規模の投資を計画するカナダの不動産ファンドCEO(最高経営責任者)のサニー・カルシ氏は断言します。日本人は「テレワークによる生産性の低下」を懸念しており、顔と顔を突き合わせる職場に回帰するとの見方も多い。一方、パーソル総合研究所上席主任研究員の小林祐児氏は「テレワークは労働者の“権利”になってくる」と見ています。企業が優秀な人材を採用したいなら多様な働き方を可能とするテレワークを恒久的な制度とする必要がある、と言うのが小林氏の分析です。
 テレワークを「継続する」か「やめる」か。企業はその分岐点に立たされています。やめる判断はそれほど難しくないでしょう。従来の働き方に戻るだけですから。難しいのは「いかに継続するか」です。特集ではテレワークを進化させた企業の取り組みを数多く集めました。「営業のリモート化で商談数を5倍」にしたソフトバンクや、「温泉で仕事して孤独ストレスを解消」したビッグローブなど様々なケースを紹介しています。テレワーク実施中の社員に聞くと8割弱が継続を希望するとの調査もありました。いかに続けるか。この特集がそのヒントになれば担当班の一員としてうれしく思います。
(日経ビジネス副編集長 江村英哲)