【メルマガ独自解説】
 創業家出身のプリンス経営者による巨額の借り入れ。あまりにセンセーショナルで記憶に新しい方も多いと思いますが、大王製紙の「カジノ事件」から今年でもう10年になります。この間に同社で変わったのは経営トップの顔だけではありません。コンプライアンスの改善ばかりに世間の目が向かいがちですが、大幅なポートフォリオ入れ替えを成し遂げ、コロナ下で独り勝ちになっています。
 3代にわたる創業家出身の絶対的なリーダーの下で、共に渋沢栄一にルーツのある名門の王子製紙と日本製紙に挑み続けてきた大王製紙。首都圏や関西圏から離れた四国という不利な立地を業界の慣行を破る直販営業で挽回するなど、二強の背中を追う中で培った野武士的なDNAが同社の魅力です。
 創業家が経営から外れれば、こうしたたくましさや力強さが失われるのではないかという見方もありましたが、なんのその。創業家が去った後に投じてきた設備投資額は、累計で3600億円。再スタートを切った当時の年間の売上高に迫る規模です。近年は海外M&A(合併・買収)にも臆せず資金を投じています。
 初の非創業家出身の社長として会社再建の先頭に立ち、4月に会長へと退いた佐光正義氏ほど、「会社とは誰のものか。オーナーシップとは何か」ということを問い続けてきた経営トップはいないでしょう。ケーススタディー「大王製紙、脱創業家で『指示待ち』も脱却」では、創業家という強烈な個性を失ってなお、普通の会社にはまとまらずに思い切りのよい経営を続けて、成長を遂げてきた軌跡を追いました。
(日経ビジネス記者 奥平 力)