【メルマガ独自解説】
 「従業員が競い合うように展示品の動画をネットにアップしているんです」。こううれしそうに話すのは、1867年創業で近江商人にルーツを持ち、西陣織などを扱う塚喜商事(京都市)の塚本喜左衛門社長です。
 新型コロナは、近江商人の「売り手によし」「買い手によし」「世間によし」の三方よし経営を掲げる同社にもマイナスの影響を及ぼしました。そうした中、同社が三方よし事業として位置付ける西陣織の作品を展示する美術館事業では、従業員4人がカメラを駆使してデジタルで展示品を紹介しています。
 その効果もあり、大学生から「展示品が見たい」との連絡があるなど課題だった若年層に関心を持ってもらえました。コロナ禍でも社員が自主的かつ前向きに行動できるのは「社会に尽くす」というトップの言葉を真に理解しているからだと感じました。
 同社は株など保有金融資産で評価益が発生し、利益面では前年比約6割増で推移しています。「今、米国の不動産の購入を検討しています。Zoomを使ってリアルタイムで物件を見られるなんて、いい時代ですね」と塚本社長は笑います。コロナ禍にも動じない生粋の商売人の姿に、圧倒されっぱなしでした。
 日経ビジネス3月29日号の特集「英米流より近江の知恵 今こそ『三方よし』経営」では、そんな三方よしを実践する企業の取り組みを取材しました。江戸時代からある日本古来の経営哲学に学ぶことは多そうです。
(日経ビジネス記者 小原擁)