【メルマガ独自解説】
 早稲田大学商学学術院のスズキトモ教授は、「A社に就職したい」と語る学生にあるアドバイスをしたそうです。「A社は従業員を大切にしているのか。利益分配状況を調べたらいい」。A社は利益が100億円規模、株主配当が20億円弱、従業員給与が400万円台でした。学生が驚いたのは株主還元のための自社株買いを約50億円していたことです。同業他社と比べて従業員への利益配分率が低く、学生はA社への入社希望をやめました。
 今、世界では従業員など株主以外の利害関係者を大切にする考えが台頭しています。「ステークホルダー資本主義」「公益資本主義」と呼ばれる考え方です。株主還元が企業の最大社会貢献とする株主資本主義に異を唱えるものです。見方によってはどちらも正しく見えますが、世界の潮流を踏まえ、日本の制度はどうあるべきかを議論する場がもっとあっていいはずです。冒頭で紹介したように将来を担う若者は、従業員を大切にしている企業をより重視しているようです。今回のスペシャルリポート「世界で進む株主利益偏重からの脱却 会社法制見直し進まぬ日本」が日本の制度や企業経営を考える一助となれば大変幸いです。
(日経ビジネス記者 小原擁)