【メルマガ独自解説】
 昨年の春に緊急事態宣言が出た頃は、今よりもずっと社会全体に緊張感が漂っていた気がします。仕事は、生活は、これからどうなるんだろうと。
 「不要不急」とは何を指すのか、「生活必需品」とはどこまでが入るのか。誰も経験のしたことのない緊急事態で、はっきり休業を要請されていない業種は、自分たちで判断しなければなりません。当時も小売業界を担当していた私は、担当企業の多くが、迷いながら進んでいることを目の当たりにしました。
 そんな中、2020年4月9日にファーストリテイリングの決算発表に出席しました。
 その席で柳井正会長兼社長は、「こういう時だからこそ、原理原則に立ち返って、『正しい』経営を行うことが大事」と発言。そして「自分たちは何のために事業をやっているのか、世の中にどんな価値を提供し、誰の役に立てるのか、何のために仕事をしているのかを自らに問いかけて、自分の原点に戻ることが何より重要」と続けました。
 全く動揺していないように見えたその姿に驚いたとともに、この緊急事態宣言下、取材だからと出かけていいのか、どうなのかと迷っていたところに、助言を与えられたような気すらしました。そのときから、柳井氏のいう「正しい経営」とは何なのか知りたいと思い、実現したのがこの特集「ファストリは 正しい会社か」です。
 M&A(合併・買収)にほとんど頼らずに、30年間で売上高が400倍になったファストリは、日本で最も急成長した企業です。その会社で今、何が起きているのか。柳井氏が目指す会社の姿とは何なのか。お読みいただければ幸いです。
(日経ビジネス記者 庄司容子)