【メルマガ独自解説】
「我々にはそんな考えはなかった」――。
 1年以上前、イトーヨーカ堂のネットスーパーの担当者はベンチャー企業が示したあるシステムに衝撃を受けました。それはスマートフォンのアプリ内で料理の献立を選べば、必要な食材を一気にネットスーパーの買い物かごに入れられる機能。これまでは実際に買い物をする時のように1品1品かごに入れていく必要がありましたが、この仕組みを使えば一気に10品目近くを入れた後に不要な食材を削除していけば事足ります。同じ数の食材を選ぶにしても、操作数や買い物時間を大幅に減らすことが可能になるのです。
 近年、イトーヨーカ堂のネットスーパー事業は配送拠点となる店舗の削減もあり、売り上げが減少傾向にありました。商品を注文するウェブサイトの使い勝手の悪さや掲載商品の見づらさも減少の一因と考えられていました。そうした問題点と向き合う中で出合ったのが、冒頭のベンチャー企業。そしてイトーヨーカ堂は「渡りに船」とばかりに、このベンチャー企業にネットスーパー専用のスマートフォンアプリの開発を依頼します。
 アプリの導入から半年近く。ケーススタディー「急増ネットスーパー需要、アプリで取り込み狙うイトーヨーカ堂」では、ベンチャー企業の力も借りて、利用者の立場でサービスを提供するという小売業の原点に立ち返ったイトーヨーカ堂の取り組みを追いました。
(日経ビジネス記者 藤中潤)