【メルマガ独自解説】
 8年ぶりに長野県栄村を訪れました。季節は紅葉の盛りで、千曲川の雄大な流れと色づいた山々のコントラストは以前と変わらず、息をのむ美しさでした。
 2011年、東日本大震災の翌日未明にこの村を震度6強の地震が襲いました。当時、長野市内に住んでいた私は突き上げるような揺れに目を覚ましました。県庁に行き、危機管理本部で震源地を確認して村へ向かいました。幸い死者こそ出なかったものの、自分の背丈以上もある雪の中、多くの住宅が倒壊しているのを目の当たりにしました。その後、1年余りの間、復興の様子を取材する日々を送りました。
 再訪に当たり、下調べをして驚いたのは数字です。私の記憶では人口は2200人でしたが、1800人を割っていました。高齢化率も5割を超えています。
 日本有数の豪雪地帯にある栄村では、点在する31の集落が冬場には孤立することもあります。それゆえに集落の隣近所で助け合う「結(ゆ)い」が息づいてきました。この「結い」をベースにして集落単位で、道路整備や農作業、福祉を住民主体で進めてきました。「できることは自分たちでやる」。安易に行政に頼らない住民自治の推進は財政の健全化にもつながるとして、視察が絶えず、マスコミにも度々取り上げられました。
 しかし実際に訪れてみると、状況は厳しかった。地震を機に人口減少と高齢化に拍車がかかり、31のうち6つの集落では世帯数が10軒以下になっていました。1人しか暮らしていない集落もありました。隣近所で支え合うのは現実的ではありません。
 特集「地方が壊れていく わが街のリアル」では、縮む日本の最前線に足を運び、そのリアルな姿を活写したつもりです。地方で先行する人口減少と高齢化の波は、いずれ東京にも及びます。特効薬のない構造的な問題に改めて向き合う機会になれば幸いです。
(日経ビジネス記者 奥平力)