【メルマガ独自解説】
 このまま人口が増加すれば世界の飢餓は深刻になるのではないか――。私は食の未来に対してそんなイメージを持っていました。11月23日号の特集「食糧危機という勝機」では現状を見据えつつ、次世代の食に対する解決策を伝えています。例えば、陸上で魚を育てる閉鎖循環式養殖システムもその一つ。増産の限界を迎える魚の海上養殖の課題解決を目指しています。日本でもソウルオブジャパン(東京・港)が2023年の完成に向け、三重県津市に年産1万トンのアトランティックサーモンを国内市場に供給できる陸上養殖場を建設中です。
 養殖されたサーモンの国内販売を手掛ける伊藤忠商事は、「陸上養殖サーモンは持続可能なビジネスを実現する商品。消費者にこの理念を訴えて『頭で理解して食べる』売り方を考えている」そうです。これは編集長インタビューに登場する仏経済学者のジャック・アタリ氏の考え方にも通じます。アタリ氏は「人口90億人時代には、私たちの世界を維持するための食文化が必要」と説いています。
 コンサルティング会社のシグマクシスによると、食と農畜水産物の新しい技術やサービスの開発により、世界では700兆円の食の新産業が勃興するそうです。日本は技術では世界と渡り合う潜在力を持っています。ただ、食のビジネスでは投資家利益を極大化するモデルは通用しません。事業の根幹に社会課題の解決を据える企業がより多くのマネーを集めるでしょう。基本は近江商人「三方よし」の経営哲学。新時代にはステークホルダーに「世間よし」の考え方が欠かせません。
(日経ビジネス記者 江村英哲)