英国で暮らしていると、中国の存在感の大きさを感じる場面が頻繁にあります。中国人が多く、中華料理店が豊富なのはもちろんのこと、通信や水道、タクシーなどのインフラに中国マネーが浸透しています。
 ロンドンの大学で外国人に対して日本語を教えるボランティアをしていましたが、最も多いのは中国人学生でした。彼らは日本の歴史やアイドルに強い興味を持っており、香港人の学生と一緒に仲良くクラスに参加していました。様々な感情を持つ人はいると思いますが、英国と中国の間には友好的なムードがあるように感じました。
 この雰囲気が、新型コロナウイルスの感染拡大で変わりました。中国の情報開示への不安が募り、対中感情は悪化。英政府は第5世代通信移動システム「5G」から中国華為技術(ファーウェイ)の完全排除を決定。中国人学生の多くは、中国に帰っていきました。とはいえ、中国マネーは英国経済に奥深く浸透しており、関係性の見直しは容易ではありません。
 そんな問題意識から日経ビジネス電子版で「中国との距離感」という連載を手掛け、欧州各国における対中戦略の変化を追いました。今回はその総集編として「スペシャルリポート」をまとめています。冒頭の地図を見ていただければ、欧州に中国マネーがいかに浸透していたかが分かるのではないでしょうか。
 その欧州より日本の方が、中国とは歴史的に深い関係にあります。本稿では日中関係について触れていませんが、欧州各国の事例を参考に、読者の方々が強大化する中国との関係性を考える一助になれば幸いです。
(日経ビジネス ロンドン支局 大西孝弘)